研究課題/領域番号 |
25293434
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
工藤 真由美 岩手県立大学, 看護学部, 准教授 (10443889)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 看護継続教育 / 看護実践能力 |
研究概要 |
慢性的な看護師不足の大きな原因の一つが、長期的に勤務する看護師の離職に伴う現象にある。加えて長期間(10年~20年)継続して臨床実践に携わることで培われる高い実践能力をもつ看護師の離職は量だけはなく、その施設また看護全体の質の低下にも関わる。そこで本研究では、長期間の経験によって培われる看護師(ジェネラリストナース)の卓越した実践能力の概念として明確化し、現状、一人前になれば終わる継続教育の目標を高め、その到達指標を明らかにすることと、それを支援できる教育プログラムを開発することを目的とする。今年度は研究連携者との検討を重ねて、長期実践をもつ看護師の実践能力の明確化を図ることが目標となっていた。研究会において概念化に向けての調査計画を進める中で、日本の病院に勤務する看護職の多様性が課題となった。日本において多くの病院施設は100床規模の小規模の施設が多数を占める。500床から1000床規模の施設とでは提供される医療の内容、また看護師の業務内容も異なる。そこで本研究では、業務内容、及び看護師の継続教育の整備などに大きな差が生じないように、対象とする看護師の勤務する施設の検討を行った。しかし、そこでもなお、看護師の継続教育に関わる状況、また看護師の実践能力に求めることは異なると考え、事前に日本における300床以上の病院施設に対して、長期実践経験のある看護師に係る教育内容、また実践能力の期待、要望などを明らかにすることとした。25年度はその調査内容の検討を行った。現時点において、調査項目の精錬、及びその後に行われる看護管理者へのインタビューの準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
① 研究会において、対象とする長期実践経験をもつ看護師(ジェネラリストナース)の定義を検討した。現状多くの施設において、管理者でもなく、専門看護師、認定看護師のような特別な専門領域をもたないが、確実に高い実践能力を発揮し、部署のケアの質に貢献している看護師を認識し、その在り方(承認、評価)を検討しようとする動きがある。そのような各病院で取り組まれている状況を検討し、また海外の文献等を交えて研究会を行い本研究で対象とする長期実践経験をもつ「ジェネラリストナース」を定義した。 ② 先に定義したジェネラリストナースもどのような場所で勤務するかによって、その業務内容は大きく異なる。日本の多様な医療施設を考慮し、どのような施設に働いているかによって、実践状況、またその期待は異なる。また現状勤務する看護師への継続教育の在り方も異なる。そこで当初計画になかったが施設状況を踏まえたジェネラリストナースの現状を明らかにする必要があると考えた。そこで300床以上施設においてジェネラリストナースの看護継続教育、また施設が求める看護師の能力を調査することとした。本調査により、日本における長期実践経験をもつ看護師の継続教育の現状と、現状の施設が求める実践内容の概要が明らかになると考える。併行して、同規模の看護管理者、もしくは教育担当者に、施設におけるジェネラリストナースの実践内容の特徴と、今後、求める実践内容をインタビューする。それによって、現状だけではない「需要」される実践能力を明らかにすることができると考える。25年度は、その調査の準備(質問項目の精錬)とインタビューガイドの作成を研究会で行った。現在、それを基に実施に向けて計画書(倫理申請書)を作成している。
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今後の研究の推進方策 |
5月~6月 日本における300床以上の病院施設に対して、長期実践経験を持つ看護師の継続教育の現状調査を実施するための準備を行う。また看護管理者へインタビューの準備も実施する。7月~8月にかけて調査及び、インタビューの実施。9月~11月にかけてデータをまとめて分析を行う。施設への質問紙調査からは、現状の各施設における継続教育の現状と課題、またどのような実践能力を持った看護師を育成しようとしているか等の傾向をまとめていくことができると考えている。また看護管理者からのインタビューからは、長期実践経験をもった看護師の実践状況の具体、また今後期待する実践能力をまとめ概念化していく。 12月~1月:分析と併行して、ジェネラリストナースの実践状況を明らかにするためにジェネラリストナースの実践の参加観察とインタビューの実施の計画を立てる。ここでは実際のジェネラリストナースの実践能力の特徴、またこれからの自身の看護職としてのキャリアディベロプメントに関わる考え、要望を聞く。 看護管理者のインタビューデータ、ジェネラリストナース自身の参加観察、インタビューよりジェネラリストナースの卓越した実践能力の概念を構築化し、そこから評価指標(案)を作成する。その内容には、現状実践されていないが、今後要求される実践能力も含まれる。現状の卓越した能力に加えて、更に今後看護師としてのキャリアを通じて高めていく、又は新たに獲得する能力を明らかにすることも目指している。この作業は、データ分析を年度末までに行い、次年度実践評価の指標を作成する。27年度はこの評価指標の信頼性と妥当性の検討を行っていく。それと同時にその明らかになった実践能力を育成するための教育プログラムの作成を行う。28年度は、その教育プログラムの運営と先に作成した評価指標を用いて、プログラムの評価を行う。このプロセスを報告書としてまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度、研究会の検討の中で、「ジェネラリストナース」の概念を検討し定義した。しかし、日本においては大小さまざまな医療施設があり、そこで行われている看護実践、また求められる実践内容は異なっているのが現状である。そこで、300床以上規模の医療施設を対象にそこでの本研究会が定義した「ジェネラリストナース」の勤務状況、及びそこで提供されている教育内容、また彼女(彼)らに求める実践内容を調査することになった。この調査は、日本における300床以上の全医療施設を対象とする。よって約3000施設となり、その質問紙の印刷及び送付、データ入力に関してほぼ100万~120万を予定している。このデータは現状の「ジェネラリストナース」の継続教育の現状と求められる能力を考えていく上の根拠としていく。 26年度6月~7月にかけて調査の準備を行い実施する。データは8月末までにはまとめ、分析する。(調査票の印刷、送付費、送付作業等の謝金、データ入力にて研究費を使用)を行う。データ収集と同時に、当初計画通り、看護管理者へのインタビューを実施し、逐語録化し質的帰納的な分析より、客観的視点から見た現状の「ジェネラリストナース」の実践力と、さらに今後求める実践能力を概念化していく。(ここではインタビューのための旅費、または謝金とデータの逐語録化のための謝金として研究費をを使用)年度末には、「ジェネラリストナース」自身の実践を調査する。調査内容はさらに今後検討するが、質問紙もしくは参加観察を予定している。(研究協力者への謝金、データの入力、旅費に使用する)年3回の東京での研究メンバーによる研究会を実施、研究経過を適宜まとめていく。(研究会運営費、旅費にて使用)
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