研究課題/領域番号 |
25293446
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
林 直子 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (30327978)
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研究分担者 |
鈴木 久美 大阪医科大学, 看護学部, 教授 (60226503)
森 明子 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (60255958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 乳がん / がん看護 / リプロダクティブヘルス / 妊孕性温存 / 学習教材 / web教材 |
研究実績の概要 |
女性乳がん患者の妊孕性温存に関する医療職の関わりを明らかにし、患者の意思決定を支える医療職間の協働への示唆を得ることを目的に医師、看護師を対象にインタビュー調査を行った。関東、関西のがん診療連携拠点病院で乳がん患者の診療に携わる乳腺外科医7人、生殖医療医1人の計8人、30歳から50歳代、男性5人、臨床経験年数は平均13.8年(SD3.8)、妊孕性温存の意思決定にかかわった経験は平均5.7年(SD3.1)であった。妊孕性温存に関する患者への説明内容として、始めに妊娠の希望を確認した上で、がん治療および患者の年齢による卵巣機能への影響、妊孕性温存の具体的な方法、温存治療による妊娠の可能性と合併症があげられた。患者の乳がんの状況と治療方針、婚姻状況と経済状況等をカンファレンスや診療録、電話等を通じて他部門、他職種と情報共有していた。乳腺外科医は説明時間の不足から看護師による補足説明と情報収集、他の医療専門職によるサポート体制、妊孕性温存に関する知識の普及、費用補助、温存治療に関する施設内規則の整備を課題に挙げた。看護師のインタビュー調査は、がん看護師9名、生殖医療看護師4名の計13名を対象とした。妊孕性温存に関する意思決定支援の頻度は、所属する部署により、0~1件から20件/月とばらつきがあった。看護師は、患者のがん診断経緯、治療方針、受け入れ状況や年齢、婚姻状況、子供の有無などの社会背景、妊娠・出産に対する価値観などを把握し、がん診断後まもない患者の精神面に配慮しながら、挙児希望の程度を確認し、乳腺外科医及び生殖医療医へつなげていた。またがん治療の優先を念頭におきながらも患者の価値観を尊重し、中立的な立場で関わることを心がけていた。医療者のがん生殖医療の知識、関心のばらつき、精神的ケア、継続的支援の必要性、医療者間、施設間での情報共有・連携の問題などを課題として挙げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初質問紙調査を郵送法で実施予定であったが、先行研究に従事したがん専門病院の研究者らの指摘によりweb調査へと形式を変更することとなり、業者選定、手続等に時間を要したため研究の進行に遅延をきたした。また同科研テーマに関する国際セミナーの開催による業務の繁忙、さらに身内の不幸とそれに伴う介護負担の増大等私的な事情も重なり大幅に進行が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(H29年度)まで研究期間を延長し、プロジェクトの公判作業である全国質問紙調査、web教材の開発を行う。そのために、新年度のできる限り早い時期にweb調査の倫理審査を終了させ、全国調査を行う。web調査の実施期間を9月末までとし、分析を年内中に行うと同時に、結果をもとにweb教材のコンテンツを同定する。教材のコンテンツを作成したのち、webデザイン業者との打ち合わせを重ね、年度内にがん看護に携わる看護師を対象とした、乳がん患者の妊孕性温存に関する意思決定を支えるe-learning教材の試作版を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り計画が大幅に遅延し、web調査、およびweb教材の開発に要する研究費を繰り越す必要が生じたため。
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