研究課題/領域番号 |
25293460
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
諏訪 さゆり 千葉大学, 看護学研究科, 教授 (30262182)
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研究分担者 |
朝田 隆 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90184142)
藤田 伸輔 千葉大学, 予防医学センター, 教授 (20268551)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症高齢者 / 家族 / 在宅 / BPSD / 薬物療法 / 支援指針 / 訪問看護 / 連携 |
研究概要 |
本研究は4つの目的を達成するために実施しているが、平成25年度はまず文献研究を実施した。その結果「BPSDの治療のための抗精神病薬は十分なケアを実施した上で、その効果が見られない場合、短期間使用すること」「処方薬の数を必要最低限のものとすること」「訪問看護サービスの導入」「服薬」方法を簡便なものにすること「医師・訪問看護師と認知症高齢者の信頼関係を築き、確実な服薬の必要性を認知症高齢者を丁寧に説明すること」「処方薬の作用・副作用の情報を得て、認知症高齢者の出現している効果や副作用を確認すること」「生活リズムの調整・確立によって食事摂取できるようにすること」「生活リズムの調整・確立のためにデイサービスや訪問介護などの在宅サービスを定期的に利用できるようにすること」「認知症高齢者の認知機能に応じて家族介護者や訪問介護員などによって確実に服薬し、また服薬できたことを確認すること」「服薬管理のためにお薬カレンダーや日めくりカレンダーを活用すること」「インスリン自己注射を行っていた認知症高齢者は内服薬の血糖降下剤への変更可能性を検討すること」などがBPSDの薬物療法の適正化のための実践事例として抽出された。 フィンランドとイギリスにおいて、認知症高齢者の認知症の行動・心理症状(BPSD)の薬物療法の支援に関するインタビュー調査および情報収集を行った。対象者は、フィンランドでは、市の在宅ケア部門の管理者(ソーシャルワーカー、看護職)2名、高齢者ケア施設の看護職4名、イギリスでは、地域で活動する看護職2名(認知症専門看護師認知症せん妄専門看護師)および老年学の研究員であった。その結果、服薬管理にICT機器が活用されていること、メモリーナースが認知症高齢者のアセスメントを行っていること、服薬管理のために必要な知識・技術を看護職が有することを保障する試験制度があることなど明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献研究は概ね終了しており、在宅認知症高齢者のBPSDを予防し、かつ発症時に適切な薬物療法を実施するための指針の基盤となるケア技術の項目が抽出されたと考えている。それらの内容を踏まえて、全国実態調査実施のための準備として、調査票の設計を開始したところである。 今後は、現在、国内で在宅認知症高齢者の薬物療法の適正化に取り組んでいる医師や訪問看護師、ホームヘルパー、介護支援専門員等を対象としたインタビュー調査を当初の計画に沿って実施していき、それらの結果も活用して調査票を早急に完成させていくこととする。 海外における実践事例の調査は、調査対象者や視察先との日程調整に時間を要してしまったため、調査・視察実施の時期が当初の計画より遅れた。また短期間では多職種にインタビューすることは困難であった。このような状況のもとデータ収集後は得られたデータ整理、分析などは順調に進行している。今後は、海外において多職種にインタビュー調査を展開する必要がある。 また、研究成果についても学会発表を中心に公表(学会演題登録済のものも含めて)している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、「目的1 自宅で療養している認知症高齢者に対して行われているBPSDの薬物療法と家族および在宅ケアチームによるケアと連携の実態を全国調査によって明らかにする」「目的2 在宅認知症高齢者に行われているBPSDの薬物療法を、変更や減量、中止を含む調整によって適正化することに取り組んでいる家族と在宅ケアチームによる実践事例(文献での報告を含む)から、適正化の基盤となるケア技術を在宅ケアチームの連携方法も含んで抽出する」ために、以下の方法で研究を推進していく予定である。 ●郵送法を用いたBPSDの薬物療法と家族および在宅ケアチームによるケアと連携に関する実態調査を実施する。そのための調査票を早急に完成させる。 ●医師や家族、訪問看護師、ホームヘルパー、介護支援専門員を対象とした薬物の変更や減量や中止を含む薬物療法の調整に必要な具体的ケア技術、在宅ケアチームにおける連携技術を抽出するための国内外でのヒヤリング調査を実施する。当初の計画では国内でのヒヤリング調査は平成26年度予定であったので、計画通り遂行していく。また遂行が遅れている海外での多職種対象のヒヤリング調査については、平成26年度にもフィンランド、イギリス、アメリカ等で実施することを計画している。平成25年度の遅れの原因が海外の調査協力者との日程調整上の困難であったため、平成26年度は時間的なゆとりをもって早期から日程調整を開始することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由として、第一に海外のヒヤリング調査が十分に実施できななかったことが挙げられる。具体的には、調査対象の国、調査対象者の確保の調整が困難であったためである。 また、平成26年度実施予定の全国実態調査に用いる調査票の設計は海外でのヒヤリング調査の結果を生かして行うことにしていたため、この調査の遂行の遅れが調査票設計にも影響して遅れてしまったため、当初の計画とおり助成金を使用することができなくなってしまった。 平成26年度も海外での多職種対象のヒヤリング調査を実施することを計画しており、また、その結果を踏まえて全国実態調査のための調査票完成も進めていく予定である。そのため、次年度に繰り越した助成金を適切に使用することができる。
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