研究課題/領域番号 |
25293461
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
増島 麻里子 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (40323414)
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研究分担者 |
池崎 澄江 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (60445202)
関谷 昇 千葉大学, 法政経学部, 教授 (00323387)
谷本 真理子 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (70279834)
長江 弘子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (10265770)
櫻井 智穂子 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (40344973)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 看護学 / 医療・福祉 / 終生期 / 高齢者 / ICT |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①現在、医療提供場所ごとに断片化されている情報を統合し、慢性疾患高齢患者や家族が必要な情報に医療提供場所のどの入り口からアクセスしても繋がることができるシステム、②患者と家族/患者同士/家族同士が終生期の充実に向けて交流できる情報共有の場の2点を併せ持つ“慢性疾患高齢患者の終生期の充実に向けた市民・医療をつなぐ情報共有システム”を構築することである。平成28年度前半は、研究計画通り【研究3】「慢性疾患高齢患者のエンド・オブ・ライフケア情報共有システムの考案」を継続し、ICT記録ツールプロトタイプを作成した。本ツールは、終生期の医療処置や仮想事例等に関する学習機能、および、終生期の生き方の基盤となる価値観を明示する記録機能から成り、当事者が終生期の生き方に関する考えを省察したり、他者との話し合いを促進することを意図するものである。考案過程では、多様な対象者が活用できるICT記録ツール作成の実現に向けて、がん看護学、老年看護学、家族看護学等の多領域の看護学研究者および、ICTに詳しい工学研究者と共に開発を行った。平成28年度後半は、実行可能性の検証研究を40歳代~70歳代頃の成人で、親や近しい人、または、自らの生き方について考えることに関心のある者10名を対象に行った。実行可能性の検証は、①受入可能性:満足度、継続利用の可能性、適切性、②需要:プロトタイプ使用への関心、媒体としての必要性、③実装:入力率・活用頻度、内容量や内容に関する要望、終生期の生き方を考えることにつながるか否か、④実用性:時間および入力に関わる時間や労力、使用する上での促進/阻害要因、タブレット使用経験、⑤有効性の限界:学習機能・記録機能がもたらす対象者への影響、である。研究成果は国際学会で報告し、学会優秀ポスター賞として表彰された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度後半から平成28年度に着手した【研究3】「慢性疾患高齢患者のエンド・オブ・ライフケア情報共有システムの考案」は、終生期の過ごし方に関する希望を記録し、他者と共有できるツールである。市民・医療をつなぐ情報共有システムとして、パソコンやタブレットで入力できるICT記録ツールプロトタイプの第一段階を作成した。平成28年度前半は、プロトタイプ作成を充実させるために会議を重ね、インターネット経由で活用できるツール開発に尽力した。ツールの使用対象は、病院に通院する高齢者ではなく、地域で過ごし、慢性疾患を有する者も含む成人から老年期の方、および、高齢者の子ども世代の家族を対象に実行可能性の検証研究を行った。研究方法は、プロトタイプを最大1ヶ月間使用した後に、質問紙への回答、および、半構造的インタビューを行った。実行可能性の検証項目を視覚化する質問紙の回答結果については、70%以上の者が該当すると回答した項目は「ツール(エンディングノート)は自分にとって必要である」「ツール(エンディングノート)は家族にとって必要である」「プログラムの項目は適切であった」であり、最も該当するものが少なかった設問は「プログラムを利用する過程で、考えたことを誰かと話した」であった。現在は、半構造的インタビュー、および、ICT記録ツールへの記載内容について、どのような健康状態の対象者に適切であるか、記載すること自体が対象者の心身へどのように影響するか等を焦点に、質的帰納的分析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度に引き続き【研究3】「慢性疾患高齢患者のエンド・オブ・ライフケア情報共有システムの考案」を継続し、ICT記録ツールプロトタイプの精練を図る。 この精練過程を経て、最終年度の【研究4】「終生期の充実に向けた情報共有システムの適用と効果検証に関する調査」に向けた質的・量的評価研究を遂行する。対象者は、①健康または下降期ではない慢性疾患と共に生きる高齢者、②高齢者を支える家族(配偶者、子ども世代も含む)、③医療者、④高齢者を支える友人・コミュニティに属する者、⑤エンドオブライフケアの社会的見地やICTツール開発に詳しい専門家(政治学者や工学研究者等)とする。調査方法は、上記対象者各10名にシステムを活用し、構成内容と提供方法、活用のしやすさ、改善点等について、質的および量的評価を行う。介入の評価方法は、アウトカム評価(前後比較調査として主に量的評価)、プロセス評価(アウトカムが変化した理由とシステム適用過程を質的に調査)を組み合わせたmixed-method研究の位置づけとする。最終的に、評価を活かし、ICT記録ツールを精練する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、【研究3】「慢性疾患高齢患者のエンド・オブ・ライフケア情報共有システムの考案」におけるプロトタイプ作成までとなったため、最終目標であるプロトタイプから精練したツールに仕上げるための経費が、次年度必要となる。同時に、計画当初の予定としていた【研究4】「終生期の充実に向けた情報共有システムの適用と効果検証に関する調査」に向けた質的・量的評価研究も行うことから、次年度の使用額を見越して資金を計画的に確保するために、余剰が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に向けて、【研究3】「慢性疾患高齢患者のエンド・オブ・ライフケア情報共有システムの考案」のツール精練に次年度経費の約70%、【研究4】「終生期の充実に向けた情報共有システムの適用と効果検証に関する調査」の評価研究には次年度経費の約30%の使用が見込まれるため、研究を計画的に遂行して、成果を発信していく。
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備考 |
Award of the Excellent Poster受賞(The 11th International Conference Innovative Nursing Care & Technology,Mariko Masujima,et al)
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