研究課題/領域番号 |
25293462
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 則子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90280924)
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研究分担者 |
高井 ゆかり 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00404921)
阿部 吉樹 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30630785)
鈴木 みずえ 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40283361)
鈴木 美穂 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70645712)
齋藤 繁 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40251110)
中山 和弘 聖路加国際大学, 看護学部, 教授 (50222170)
五十嵐 歩 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20595011)
竹原 君江 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70709865)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 質改善 / 長期療養施設 / ケアの質 / 介入研究 / 文献検討 / 慢性痛 |
研究概要 |
本年度は文献検討・施設見学を実施した。文献検討は慢性痛緩和ケア、施設ケアの質改善に関して検討した。海外視察では、IAGGの主催するNursing Homes分野の小さな学会で情報収集したほか、Missouri大学看護学部の高齢者ケア施設を視察した。国内では学会参加および療養病床の視察を実施した。 ①慢性痛の緩和:39文献を検討した。18文献で疼痛緩和効果が言及され、多職種連携による介入により、疼痛が有意に軽減された。薬物療法、運動などの身体活動、友人や家族からのソーシャルサポート、鍼、温熱、休息、食事療法、生活スタイルの変更などが疼痛管理に有効と考えられる。 ②認知症高齢者の痛み: わが国の認知症高齢者に対する痛みのケアに関するエビデンスを文献から明らかにした。欧米では痛みアセスメントツールがあり、ケアでは認知行動療法(CBT)が効果的であった。 ③長期療養施設のケアの質改善のための介入方法: 介入は7つのタイプに大別された。2~3つの介入タイプが複合して1つの介入プログラムにすると効果が上がりやすいようであった。質改善の枠組みには「PDCAサイクル」と「Rogersのイノベーション普及モデル」が言及されていた。質改善の促進要因として9要因が指摘された。 ④視察: ミズーリ看護学部が設立した長期療養施設Tigerplaceを訪ね、大学機関と臨床現場の共同研究運営の工夫を把握した。IAGG Nursing Homesの学会は、Nursing Homeのケアの質に関するこれまでの実践等が報告された。RCTで客観的に質の向上を示すのは難しいことが窺われた。また、日本慢性期医療学会に参加した。抑制、褥瘡などの演題、ITCに関し地域も含めた情報の共有化に関する発表があった。視察した病院は、療養病床でありながら亜急性期病床への意識付けが強く感じられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年は、看護管理者へのインタビュー調査を実施する予定であったが、意に相違して和文献が全くといってよいほど検出されなかった一方、英文献は米国を中心に充実した研究の蓄積があることを学んだ。このため、英文献を丁寧にカバーしつつ、国内外の学会発表や施設見学に時間をかけ、周辺事情の把握に努めることにした。その上で、インタビューは次年度にまわすことにした。 平成26年度には、インタビュー調査をもとに質問紙調査を実施し、また効果的な介入構築するべく、海外からの識者を招いたシンポジウムを開催する計画であったが、上記の事情から海外研究者との交流を一部今年度に移動した。 以上のように、研究の進捗に合わせて計画を微調整したため、予算活用の流れが変更された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の文献検討や施設見学等では、長期療養施設のケアの質改善については米国の文献が多くあること、これはすなわち効果的な介入が困難でありさまざまなとりくみが試みられ、知見の蓄積があることがわかった。一方で、わが国において長期療養施設のケアの質改善に関する取り組みは、研究的なスタンスからの取り組みがほとんどないことがわかり、更に保健医療領域において慢性痛のケアに関する関心が著しく低いこともわかってきた。 以上より、本プロジェクトのゴールとして、一気に介入を試行するよりも、数少ない施設で注意深い取り組みを実施することに修正し、介入の開始までに十分案を練ってとりかかることに留意したい。また、海外の識者との情報交換にあたっては、現地の視察とその場での取り組みの経過の注意深い把握を優先的に実施することにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年のうちに看護管理者等へのインタビュー調査を実施する予定であったが、和文献がほとんど見当たらないこと、英文献が充実していることを確認し、広く英文献の確認と国内外の現場の視察等、周辺の把握に努めることに切り替えた。インタビュー調査が実施できなかったため、その予算を26年度に移動したい。一方、26年度に実施予定だった海外研究者との集中討議、意見交換が一部実施できた。 平成26年度の冒頭にインタビュー調査を実施する予定である。
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