研究課題/領域番号 |
25293462
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 則子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90280924)
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研究分担者 |
高井 ゆかり 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00404921)
五十嵐 歩 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20595011)
阿部 吉樹 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30630785)
齋藤 繁 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40251110)
鈴木 みずえ 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40283361)
中山 和弘 聖路加国際大学, 看護学部, 教授 (50222170)
鈴木 美穂 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70645712)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 長期療養 / 高齢者 / ケア / 質改善 |
研究実績の概要 |
今年度は療養病床に勤務する職員へのインタビューと海外視察とを実施した。 ①インタビュー:医療療養病床を含む3病院の職員(看護職・介護職・社会福祉士・薬剤師・栄養士・医師・事務職員など)計39名に対し、療養病床におけるケアの質についての意見を聴取した。施設間で共通する知見は以下のようなものである:一定のケアの質は確保されているものの個別性や社会性の点で課題もあると認識されている。その達成には人員が圧倒的に不足しており、機能別のケア提供により高齢者像がつかみにくなっている。長期療養におけるケアのモデルや質評価指標が得にくく、ゴールの達成感や良い自己評価が持ちにくい状況がある。多職種間のカンファレンスを実施し情報共有や意思統一の効果を実感している。各種の勉強会等を実施し質改善に努めている。一方、組織理念の職員への浸透の程度と職員間の関係には、施設・職場により相違が見られた。 職種ごとの特徴は以下のようなものがあった:看護師・介護士は、最低限のケアと安全確保に精一杯で、高齢者や家族の個別の意向に沿えないことや、自身の身体的負担が増すことに対する辛さを抱えていた。看護・介護以外の職種は忙しい看護・介護を気遣い、積極的に病棟に出向いて高齢者の状況を把握する、業務改善を工夫する、必要な知識を補う、など負担軽減のための支援に努めていた。また、専門職ごとの協会・学会や研修会など、職場外に出てのケアの質改善の努力が見られた。管理者はスタッフの困難を積極的に聞き取りともに努力する姿勢を示す一方、業務改善を模索していた。 ②視察: 香港・英国・オランダの高齢者長期療養施設を視察した。文献検討で窺われた通り、長期療養施設のケアの質に関するシステマティックな試みは米国が中心であり、今回訪問したアジア・ヨーロッパ諸外国では長期ケアの質へのシステマティックな評価支援機構は発展途上であることが窺われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度から、本研究の申請時点では実施されていなかった地域包括ケアシステムの本格的運用が開始され、療養病床にも地域包括ケア病床の導入や在宅復帰率などの新たな試みが始まった。インタビューの内容等にもその点が反映され、インタビューやその分析に困難を生じたり、今後計画するケアの質改善のための支援の計画にやや困難がある。この点を調整しつつ勧めてゆきたい。
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今後の研究の推進方策 |
調査協力病院の利益を考え、在宅復帰率に反映されるケアの質とその実現という点を加味しつつ、現場のニーズを的確に把握しながらケアの質改善に向けた介入を試みたい。その経験も加味しつつ、今年度のインタビューで明らかになった「長期ケアのケアの質」を客観的に把握する指標づくりを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期療養施設のケアの質に関する全国調査を翌年度実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
全国調査の実施に使用したい。
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