本研究は、琵琶湖と中国の太湖・洞庭湖における稲作と淡水漁労など水辺環境の民俗事例を対象に、比較民俗調査を中国湖南省博物館や河海大学などと協働で行い、①国際的な博物館・大学連携による人文科学研究モデル事例を確立する。②稲作発祥の地である長江中流域の洞庭湖を起点に、下流の太湖も含めて稲作と不可分に結びついた淡水定置網漁のエリ、水上居住民の家船分布を航空写真などから探査して分布平面図等を記録化する研究法の開発を行い、容易に現地調査を行えない海外など遠隔地における予備的民俗調査法の確立を図る。③同じ東アジア地域にある長江流域の洞庭湖・太湖などと琵琶湖の資料による稲作および淡水漁労の比較調査の成果は、博物館学的な意義も含めて、企画展示および国際連携講演会として公表し、国を超えた博物館連携・協定が、研究調査・展示公開という実質的なものを伴うものとして確立することを目的としてきた。 今年度は、これまで継続的に行ってきた航空写真と現地調査を組み合わせた平面図および記録写真等の作成・整理、および過去の記録写真の再発掘も行った。こうしたことを踏まえて過去4年以上にわたる本研究の準備段階から調査研究の過程と成果の取りまとめを行い、これを論文化して公表するとともに、湖沼環境をテーマとする国際学会においてもその成果を発表した。さらには考古民俗学的方法論の博物館学的な展示や公開の手法と意義を追究し、比較研究するための調査を日本や中国で行い、今後さらに本研究にかわる発展的な日中共同研究に向けて、博物館・大学に加え中国太湖周辺の江蘇省を中心とする行政・研究機関も含めて取りかかるための基礎的検討と協議を実施した。
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