研究課題/領域番号 |
25300012
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山越 言 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00314253)
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研究分担者 |
伊谷 樹一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20232382)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有用樹 / アグロフォレストリー / 野生動物 / 焼畑 / 航空写真 / 世界自然遺産 / 国際研究者交流 / ギニア |
研究概要 |
二次的自然景観の保全は、農業多様性と生物多様性双方にとって有益であり、高い現代的重要性を持つ。2013年度、本研究課題では、西アフリカ・ギニア共和国南部森林地域に広く見られる、焼畑農業の休閑サイクルに適応した有用樹アブラヤシが卓越するユニークな農業景観に注目し、以下のような活動を行った。 主調査地であるギニア共和国南部森林地域、とくに世界自然遺産ニンバ山周辺の生態系および農業景観について、現地調査および航空写真、衛星写真の精査から、アブラヤシの生息状況の概要を把握した。また、同地域に関する文献渉猟により、検証可能な仮説の絞り込みを行った。その結果、アブラヤシの生息密度と人為的な関与の強さが比例するというVanderyst仮説を、GIS的手法により検証する可能性が浮上した。そのための素材として、同地域の1950年代の航空写真と2010年代の衛星写真がすでに入手済みである。また、1980年代に撮影された航空写真の存在も確認しているため、生息密度について精緻な年代比較が可能であることが確認できた。 また、航空写真に含まれる三次元情報からヤシ樹木の樹高を推定する技術の適用可能性について検討した。畑地のような開けた場所に分散し、なおかつ樹齢推定が胸高直径ではなく樹高によって行わざるを得ないヤシ科に属するアブラヤシは、同技術の適用に好適な条件を備えている。推定樹高から個体単位での60年にわたる成長の様子が再現できる可能性が出てきた。 また、アフリカの東西にわたるアブラヤシの生息状況や利用を把握するため、研究分担者、協力者がギニア北部乾燥地域、タンザニア内陸部および島嶼部において広域調査を行った。降水量、乾期の長さといった環境条件に加え、人々による管理や利用方法の違いにより、二次的植生の中でのアブラヤシの地位については予想以上の多様性が見られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
航空写真等を用いたGIS的手法によるアブラヤシ植生の歴史的変遷の定量化については、資料の入手および手法について不安があったが、初年度の活動により実行可能性を確認することができたのは大きな収穫であった。また、文献調査により、1910年代に提唱されていた魅力的な仮説が今日まで実証的に検証されていないことも確認できた。樹高の推定による成長速度の推定の可能性については、当初想定していなかった副産物であり、この研究課題の中でGIS的方面の重要性が高まったと言える。 また、東アフリカとの広域比較については、研究分担者と協力者により、タンザニア内陸部で盛んな利用が知られているタンガニーカ湖地域、生育・利用が不活発な中部ドドマ地域および沿海島嶼部のザンジバル島において広域調査を行い、その多様性を確認することができた。また、ギニア国内の多様性についても、研究協力者による乾燥地域の広域調査により、その概要を把握することができ、順調に推移したと言える。 いっぽう、当初予定していたギニア南部における食用ヤシ油の生産・流通状況調査は、現地調査時にアブラヤシの生息調査の方に注力したことや,現地協力者の都合により、当初予定していたほどの調査を行うことができなかった。この点は2014年度以降の現地調査にて補足していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大きく進展したGISによるアブラヤシの生息状況およびそれに影響を与えた人口増や焼畑の強度に関する検証を優先して分析を進めたい。まずは検証対象地域の地図上での絞り込みを行い、画像データから確認できるヤシ樹木個体の同定やカウントといった分析を進めて行く。また、重要な資料として、1980年代初頭にJICAのプロジェクトにより撮影されたギニア全土の航空写真のうち、必要部分を入手する手続きを進める。また、雇用した研究員により、航空写真による樹高推定技術の習得を行い、画像分析において同技術の早期適用を図る。 主調査地のギニア共和国では、2014年1月以降エボラ出血熱が発生し、多量の死者を出す事態が生じている。このため、予定していた同国および周辺国での現地調査が予定どおり実施できるかが現状では不透明である。このため、とくに2014年度については現地調査の優先度を下げて、GISや文献調査を優先して行うといった対処が必要になるかもしれない。 研究分担者、協力者による広域比較調査は、タンザニアにおける調査を進展させ、同国内の多様性をさらに把握するように努める。また、政治・社会情勢が許せば、ギニアや近年アブラヤシプランテーション産業が発展している隣国リベリアでの広域調査および、食用ヤシ油の生産・流通状況の調査を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者を一名、年度後半に研究員として雇用する予定であったが、当人の都合により、2014年度当初よりの雇用となったため、同研究員が担当する業務とともに基金使用の時期を遅らせて2914年度からとした。 当該研究員は2014年度はじめから雇用し、GIS技術の習得およびそう技術を適用した分析を2014年度に集中して行う。
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