ムラピ山の噴火による景観や住民生業の変化について調査を行った。被災地における自然植生はアカシアなどの外来種が優占することで開始されていた。窒素固定を行い早生樹でもある外来種から始まる植生遷移は、二次遷移的なものであり植生の回復を促進させるものであると考えられた。これは在来の樹種のみではなしえない。また、住民生業の復興も、外来種と、土砂採取、そして災害地を観光の対象とすることにより増加した就労機会を活用して行われた。このようにムラピ山域でみられる資源利用形態は、外来種の特性および、被災によって増加した就労機会などの活用により成立するものであった。 また、住民が居住地近くに所有する土地では、プカランガンとよばれる多様な果樹や作物が栽培される樹園地が造成され、この地域の主要な景観を構成している。無被害地のプカランガンでは、Paraserianthes falcatariaというセンゴンと現地でよばれるマメ科の樹種が中心となっていたが、他にもジャックフルーツなどの果樹や、コーヒー、チョウジなどの換金物等、多様や有用種から構成されていた(木本と作物種55種を確認)。その一方、火山の被害地ではセンゴンが多くの場所で植えられており、その個体数、胸高断面積合計において全体の80%を占有していた。これは、政府などからの苗木の支援などもあり、単一林として植栽されたり、果樹や作物との混植をおこなうなどして、調査対象となった全ての世帯で植栽されていた。 これらの結果として、噴火前後で植生は人為の影響の有無にかかわらず単純化していった。また、被災による農外収入を得る機会の増加および、被災の結果としての植生の単純化などが、長期的に住民の生活と景観にどのような変化をもたらすのか継続的なモニタリングが必要であると考えられる。
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