研究課題/領域番号 |
25300015
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
奥村 順子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (40323604)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ラオス / 少数民族 / 健康希求行動 / 乳幼児死亡 / 死亡要因 |
研究実績の概要 |
平成26年度,セポン郡における対象地域を4村から7村(Alang Yai, Kaegnpae Nai, Kaengluang Noy, Dong Noi, Van yean Gnai, Vang yeang Noy, Sobsaly)に拡大し,258名の小児につき11カ月間の時系列データを得ることができた.対象となる7村に居住する部族は,プータイ族,トゥリ族,マンコン族であり,それぞれの村は単一の部族で構成されている.新たに対象地域として追加した3村は,これまでの4村と異なりアクセスするための道路事情が極めて悪く,この地理的影響が疾病罹患児の治療の遅れに影響を及ぼすのではないかと推測される. 昨年,現地の調査員より要望が出た身体測定を実施し,小児の成長に関する問題を解析することができた.その結果,WHOの基準によるStuntingが全体の62%にみられた.他方,身長に対する体重,つまりWasting の割合は7%と低かった. 予防接種の記録を紛失している保護者が多く正確な状況が把握し難いため,予防接種活動を行っている地元の母子保健チームの記録との比較を試みることが,交渉の末ようやく許可されたところである. 平成27年度は,現地の小児保健組織とともに小児の成長における問題と予防接種を含む医療サービスへのアクセスの問題改善を目指し,母親を中心とする保護者の意識に関する調査を行う.さらに,その結果を反映した啓発活動等を実施する計画である.啓発活動の成果のモニタリングのため,小児の疾病罹患状況と身体測定を継続して実施する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度,セポン郡における対象地域を4村から7村(Alang Yai, Kaegnpae Nai, Kaengluang Noy, Dong Noi, Van yean Gnai, Vang yeang Noy, Sobsaly)に拡大し,258名の小児につき11カ月間の時系列データを得ることができた.対象となる7村に居住する部族は,プータイ族,トゥリ族,マンコン族であり,それぞれの村は単一の部族で構成されている.新たに対象地域として追加した3村は,これまでの4村と異なりアクセスするための道路事情が極めて悪く,この地理的影響が疾病罹患児の治療の遅れに影響を及ぼすのではないかと推測される.実際,死亡例は新たに追加した3村で8例であったのに対し,他の4村では2例であった. 昨年,現地の調査員より要望が出た身体測定を2回実施したが,1回目は体重計が破損するなどしたため,その半年後に実施した2回目のデータに基づき,小児の成長に関する問題を解析することができた.その結果,WHOの基準によるStuntingが全体の62%にみられた.しかしながら,対象となる部族は遺伝的に身長が低いことから,身長に対する体重,つまりWasting の割合をみたところ,緊急に栄養摂取を改善する必要が認められた小児は全体の7%であった. 予防接種の記録を紛失している保護者が多く正確な状況が把握し難いため,予防接種活動を行っている地元の母子保健チームの記録との比較を試みることが,交渉の末ようやく許可されたところである.
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今後の研究の推進方策 |
小児の成長における問題と予防接種を含む医療サービスへのアクセスの問題が見られたことから,平成27年度はそれらの問題改善に向けた母親を中心とする保護者の意識に関する調査を,フォーカスグループディスカッション等により行う.また,その結果を反映した啓発活動等を実施する計画である.具体的には以下のとおりである。 (1) 母親を中心とする保護者の意識に関する調査を実施し,その結果に基づき有効な啓発活動を現地の小児保健組織とともに実施する. (2) 啓発活動の成果を見るため,小児の疾病罹患状況と身体測定を継続して実施する. (3) コホート調査から得られた時系列データの解析を適宜行い,危険要因等があれば早期に対応策を計画する. (4) 身体測定のデータの質向上とこれまでの家庭訪問調査によるデータの質の維持,現地の行政機関とのデータ解析結果の共有のため,定期的にワークショップ(2~3回を予定)を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに調査対象地域となる僻地の3村を追加したことで,2週間毎に現地で実施する世帯訪問調査にかかる業務委託先を変更することになった.このことに時間を要したため,契約期間が6月中旬からとなり,3村追加にかかる世帯番号登録などの調査員に支払う謝金等も6月以降に持ち越された.このため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
現地の疾病対策センターと業務委託契約を平成26年6月に交わすことができ,契約後データを定期的に受け取る一方で,本研究者は定期的に現地に出向きデータの質の確保と現地へのフィードバックを行ってきた.契約期間は1年間で平成27年6月末に終了するため,平成26年度から持ち越した研究費を最終四半期の契約費用と,現地への平成26年度の結果報告及び平成27年度の契約更新を目的とする研究者による渡航旅費に充てる.
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