研究実績の概要 |
平成27年度に引き続き,セポン郡の7村(Alang Yai, Kaengpae Nai, Kaengluang Noy, Dong Noi, Van yean Gnai, Van yeang Noy, Sobsaly)を対象として調査を行った.調査開始以降に生まれた乳幼児も対象に加えてきたため,現在297名の小児(登録時5歳未満の小児)を追跡している.平均年齢は3.4歳(SD: 1.9歳)で,昨年度の1年間の観察期間中に少なくとも1回以上、有病と報告された小児は163名であった。 平成28年度の死亡例は1例のみで,その後実施した聞き取り調査で,当該乳児の母親が初産で陥没乳頭であったため,水分と栄養補給ができなったことが死亡原因であったことが判明した.母乳育児の推進を徹底するあまりに,人工乳(粉ミルク)の使用を避けてしまったことを教訓として今後の対応に活かすため,セポン郡の母子保健スタッフとワークショップを開催した.緊急時であっても,人工乳を使用するなど臨機応変に対応することは現場では判断できない旨の主張が相次いだ.セポン郡における乳児の生存率向上のためには,現場スタッフによる自主的かつ柔軟な対応を促すに足る教育と研修が不可欠であることが示唆された. 平成25年度から26年度にかけての11名の死亡例は,死亡時期とマラリア流行時に相関がみられ,死亡時の症状も発熱が主訴であったことから,マラリアが原因ではないかと推察している.調査地域であるセポンの降雨量と気温の年間変化とマラリア流行との相関も明らかとなった. 年齢別身長のz-scoreは,rangeが-3.67 z-score~-1.36 z-scoreと7村全てで当該年齢児の理想的身長を下回っており,対象小児が慢性的に栄養摂取不良であることが判明した.
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