研究実績の概要 |
セポン郡の7村(Alang Yai, Kaengpae Nai, Kaengluang Noy, Dong Noi, Van yean Gnai, Van yeang Noy, Sobsaly)における前向きコホート調査は,平成29年7月をもって3年間の観察期間を無事満了した.データのクリーニングとともに追加聞き取り調査を実施し,データベースの構築と解析に着手した. 調査開始時258名であった対象児(登録時5歳未満の小児)は,最終的に422名となり,3年間で382,109人日の対象児の健康状態を追跡することがきた.終了時の対象児の平均年齢は4.9歳(95% CI: 4.7 - 5.2歳)であった.総疾病罹患日数は2,804人日で,各年の平均罹病期間は1年目,2年目,3年目それぞれ7.3日(95% CI: 6.3 - 8.4日),6.4日(95% CI: 5.5 - 7.3日),5.7日(95% CI: 4.8 - 6.6日)であった.主たる症状は,発熱,咳,下痢であった. 昨年度,全7村において低身長が蔓延したことから,調査地全7村に慢性的な栄養摂取不良の問題があることが示唆された.また,セポン郡の商業地域にアクセスがよい村ほど,低身長児の割合が高かったことから,いわゆるNutrition Transitionによる弊害を疑い,保護者による食料品等の購入実態を探るための追加調査を行った.その結果,インスタントラーメン,スナック菓子,人工甘味料が添加されたジュースや豆乳等の甘味飲料を頻繁に子供に買い与えており,結果として食事として提供される食料の量が減少していることが判明した.子供たちの食事は,これまでの伝統的なものが,インスタント食品やスナック菓子に取って代わられるつつある.これらは,無用な支出を増やすのみでなく小児の成長に悪影響を与えている.得られた結果は憂慮すべきものであり,栄養に関する住民啓発活動の必要性が明らかになった.
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