研究課題/領域番号 |
25300016
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
冨永 典子 お茶の水女子大学, その他部局等, 名誉教授 (30164031)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミャンマー / チン州北部 / 植物資源 / 薬用資源 / 水環境 / 土地利用図 |
研究実績の概要 |
本研究はチン州北部において生活環境の現状把握および生活改善に有用な自然資源の調査を目的としている。26年度は前年に調査したティディム周辺のケネディ山、リー湖に加えて、新たにファラム、及びチン州州都のハカ周辺の調査も行った。 植生:チン州は山ばかりの州で、焼畑が基本であり、長年繰り返されてきたため原生植生はほとんど残されておらず、焼畑再生地に特徴的な植物群落を呈している。標高約2700mのケネディ山頂上付近の草地2地点、森林1地点につき、ブラウン・ブランケの方法により植物群落の調査を行った。草地は焼畑地でないが野生牛放牧のための火入れや食圧の影響が見られた。イネ科やカヤツリグサ科が優占種であるが、その他キク科、マメ科、ショウガ科、セリ科、タデ科、バラ科などの草本や、ブナ科、ツツジ科の木本の実生など、多様な植物が生育していた。森林はコナラ属が優先する二次林である。山頂および登山道周辺にはセンブリ、トリカブト、イブキトラノオなど日本における薬用植物と同じ属の草本も多く見られた。チン州の焼畑の再生林ではケネディ山頂とは異なるコナラ属が多く見られ、焼畑に適さない尾根筋、傾斜の強い山地にはマツが多く植林されていた。QGISを用いた土地利用図作成に向けて予備的調査を行った。 薬用資源:カレーミヨ、ヤンゴンの生薬店にて伝統薬の用途や原料植物について調査を行った。 水環境:小さなハート型の湖、リー湖は赤潮が見られた25年度より約1ヶ月早い時期に観測を行った。赤潮は見られなかったが、クロロフィル量によるバイオマス量は赤潮発生時よりむしろ多かった。赤潮原因生物の渦鞭毛藻類は見られるものの量が少なく、ツヅミ藻のStaurastrumが優先種であった。河川水は、マニプール川、カラダン川の支流について測定し、飲料水はファラム、ハカの宿舎のものについて分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり11月下旬に観測を行った。 チン州北部は山ばかりで未舗装の山道を延々と走らねばならず、一方自動車は着実に増えているため道路の補修、拡幅作業がいたるところで行われており、ブルドーザの作業が終わるのを待って道を進むことが何度もあり、目的地にたどり着くまでに多くの時間を要した。 木本の植生調査は今回初めて行った。また、これまでのティディム周辺の他に南側に観測地を広げ、土地利用図の作成に向け、ファラム、ハカ周辺の植生観察を行った。 薬用資源も同様に今後予定している聞き取り調査の予備調査が出来た。 水環境の調査で、リー湖の観測は予備調査を加えてこれまでに3回行った。リー湖の淡水赤潮は言い伝えどおり12月下旬に見られ、原因藻類は渦鞭毛藻類で、その発生の機構については3回の観測でははっきりしたことは言えないが、水温の低下ではないかと考えている。赤潮発生時には走光性が強い渦鞭毛藻類が表面に密集するため、その下に光が届きにくく全体としては植物プランクトンの量が少ないと考えられる。また、湖全体をまわって流入する川がなく、湧水湖であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
植生、薬用植物の観察には多くが枯れてしまう乾季より雨季の方が望ましいが、未舗装の山道ばかりなので移動は困難を極める。最終年度にあたるため、これまでに観察したことのない5月(雨季の初め)に調査を行い、対象地はティディム、ケネディ山、ファラム、ハカとし、植生データの集積をはかる。26年度に遠望したハカ周辺の棚田も観測する予定である。26年度はハカからファラム、カレーミヨと戻ったが、27年度はハカからバガンを目指して下り、途中でマニプール川が合流するチンドウィン川、チンドウィン川が合流したエーヤワディー川の水も採取し分析する予定である。また、山岳地から乾燥丘陵地帯への植生の変化も見る。 可能ならば10月初めに短期間でケネディ山の観測も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度11月に、ミャンマーでのフィールド調査において予定していた連携研究者の協力が急遽得られなくなった。当該研究者は薬用資源、植物資源の調査の統括者であり、今回の調査地は初めての場所であるため、本研究遂行上当該研究者の参加が必要であるため、27年5月に当該研究者が26年度に予定していた調査も加えて実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の調査によって得られた写真その他の資料を検討し、他の連携研究者と討議する。平成27年度にの5月に行うフィールド調査は26年度とほぼ同じ地域とし、26年度に行うことの出来なかった調査を併せ行う。
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