研究課題/領域番号 |
25300017
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
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研究分担者 |
加藤 剛 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 客員教授 (60127066)
青山 和佳 北海道大学, 大学院・メディアコミュニケーション研究院, 准教授 (90334218)
本名 純 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (10330010)
福武 慎太郎 上智大学, 外国語学部, 准教授 (80439330)
伊藤 眞 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60183175)
左右田 直規 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30345318)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東南アジア島嶼部 / 国境 / 境域社会 / 地域間比較 / 民族 / 人の移動 |
研究概要 |
本研究組織は、まず6月に東洋大学において最初の打合せを行った。各メンバーは4年間および本年度の研究計画を提出し、それを全体で検討した。同時に計画に関わる文献リストも提出した。打合せをふまえて、境域社会担当者は、生活圏・ネットワーク・民族編成の変容に関するフィールド調査ないし資料調査を、国境管理レジーム担当者は、国境管理に関連する資料調査をそれぞれ実施した。メンバーのうち3名は長期在外研究の機会を得たため、同研究による滞在中に本プロジェクトの調査を実施した。また1名は育児休暇をとった。こうした事情により、助成基金には繰越が生じた。 調査の概略は次のとおり。(境域社会担当者)長津と加藤は、インドネシア・リアウ島嶼州において、同州とシンガポール・マレーシア間の越境移動と民族間関係に関する調査をおこなった。他に長津はサバ州でも同様の調査を実施した。また、国境・越境移動に関する新聞記事の簡易データベースも作成した。青山は、8月から長期滞在した米国ハーバード・イェンチン研究所(HYI)でフィリピンにおける物流と宗教のグローバリゼーションに関する資料調査を行った。また、フィリピン・ダバオ調査に関してHYIの研究者から助言を受けた。伊藤はインドネシア・北カリマンタン州タラカンを中心に、主としてブギス移民の生業活動に関する調査、資料収集をおこなった。福武は東ティモール民主共和国ボボナロ県およびエルメラ県において、住民の国境を跨ぐ言語文化圏と親族関係の広がりに関する調査をおこなった。左右田は11月から長期滞在したクアラルンプルにおいて、国境を超える「マレー世界」運動としての「ドゥニア・ムラユ・ドゥニア・イスラーム」運動に関する資料調査をおこなった。本名は、8月から長期滞在したジャカルタにおいて、インドネシアの海洋安全保障政策とその変遷に関する資料調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究メンバーのうち3名は長期在外研究の機会を得、また1名は育児休暇をとった。こうした事情のため、全メンバーが当初の計画通りに調査を実施しえたとはかならずしもいない。しかしこれら3名は、次年度以降に予定していた現地調査や、当初計画では予定されていなかった資料調査等を在外研究等の機会にあわせて実施することが可能になった。研究プロジェクトでは、初年度には、現地調査に基づいて、当初計画に軌道修正を加えつつ、具体的な問いと対象を設定することがまず求められる。この作業については、全員が順調に進めている。以上をふまえ、本研究計画は全体的にみて順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、対象とする3つの国境域において、越境移動とそれを媒介とする民族・文化の再編が歴史的になされてきたこと、そしていまもそれが持続していることを仮説としている。この仮説じたいに問題はない。しかしながら、その「程度」にはかならずしも申請者の事前の想定が適切であったとはいいがたい。各国政府の国境地域への関与は、予想していたよりも強くなっていることが現地調査を通して明らかになったのである。そのことは、特にシンガポール周辺国境域で顕著であった。ここでの越境移動は、かつてのような在地住民を主体とする多孔的・多方向的なものではなくなっている。それは、あきらかに国家の管理下に置かれており、国家に管理されない自由な人の移動は少なくとも顕在的ではなくなっている。次年度以降は、国家による国境管理の制度と政策と、在地の人びとの国境認識の双方と、それらの歴史的変化を視野に入れ、そのうえで後者が国境と柔軟に関わり合い、国境を跨ぐ様々な実践を紡いでいる様子を捉えていく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
メンバーのうち3名は勤務校の措置ないし民間の奨学制度により年度の後半期、長期在外研究の機会を得た。そのため、同研究による海外滞在中に本プロジェクトの調査を実施した。滞在国は、インドネシア、マレーシア、アメリカ合衆国である。1名は、9月から派遣教員としてマレーシアのマラヤ大学で教鞭をとった。このメンバーは当初配分された補助金の一部を代表者に戻した。1名は一部の期間、育児休暇をとった。こうした事情により助成基金には繰越が生じた。 本年度も各メンバーが計画通りに予算を執行するよう務めることはいうまでもない。同時に、昨年度に在外研究等で予定通りの調査ができなかったメンバーは追加・補足の調査を実施する。また、代表者が昨年度末に作成した国境・越境移動に関する新聞記事の簡易データベースを充実させ、それをウェブ上に公開する。この作業は新たな計画として実施するため、そのための費用を繰越経費で補う。
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