研究課題/領域番号 |
25300017
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
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研究分担者 |
加藤 剛 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60127066)
青山 和佳 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (90334218)
伊藤 眞 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (60183175)
福武 慎太郎 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (80439330)
左右田 直規 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30345318)
本名 純 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (10330010)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東南アジア / 国境 / 境域社会 / 地域間比較 / 民族再編 / 越境移動 |
研究実績の概要 |
各メンバーは,昨年までの調査を継続した。境域社会担当者は,生活圏・ネットワーク・民族編成の変容に関するフィールド調査ないし資料調査を,国境管理レジーム担当者は,国境管理に関連する資料調査をそれぞれ実施した。全体としては9月に長崎県対馬市役所において,臨地研究セミナー「2000年以降の東南アジア島嶼部における国境社会 のダイナミクス」を開催し,同時に各メンバーの調査の進捗状況を確認した。 調査の内容は次のとおり。(境域社会担当者)長津と伊藤は,マレーシア・サバ州タワウとインドネシア・北カリマンタン州ヌヌカンの間の国境を往来調査し,両国に跨るセバティク島などにおいて,ブギス人やバジャウ人の越境移動,越境交易,国境を超える社会関係に関する調査をおこなった。また,長津はサバ州のフィリピンとの国境地帯でも同様の調査を実施した。昨年に続き,国境・越境移動に関する簡易データベースも作成した。 青山は,フィリピン・ダバオ市においてキリスト教団体による開発援助と文化的アイデンティティ」関するフィールド調査を実施,各教会の牧師に予備的なインタビューを行った。加藤はマレーシア・ヌグリスンビラン州の博物館の民族文化展示に関する調査をおこない,また同州のアダット・リーダーを対象に聞き取り調査を行なった。福武は昨年に引き続き,東ティモール民主共和国において,住民の国境を跨ぐ言語文化圏と親族関係の広がりに関する調査をおこなった。左右田は国内において「ドゥニア・ムラユ・ドゥニア・イスラーム」(=「マレー世界・イスラーム世界」)運動をはじめとする,「マレー世界」の連帯と汎マレー・アイデンティティの復興をめざす政治的な動きに関する資料調査を行った。本名は,ジャカルタにおいて,インドネシアの人身取引を中心とする越境組織犯罪と安全保障政策に関する資料調査および治安関係当局において聞き取り調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の臨地研究セミナー「2000年以降の東南アジア島嶼部における国境社会のダイナミクス」(長崎県対馬市)において各メンバーの調査の進捗状況は確認できている。セミナーにおいては、1)越境アクターの階層的差異、2)国境域の政治経済文脈の2点を精査して、対象とする集団の生活圏・ネットワーク・民族編成の変容を捉えることが必要であることが理解された。次年度はこの留意点をふまえて、調査研究は実施されることになる。こうした留意点は研究が進行するなかで確認された事項であり、進捗状況にかかる問題ではない。
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今後の研究の推進方策 |
境域社会担当のメンバーは、上記した留意点――1)越境アクターの階層的差異、2)国境域の政治経済文脈の2点を精査して、対象とする集団の生活圏・ネットワーク・民族編成の変容を捉えること――を念頭に各自の対象地域・民族に関する調査を進める。2015年末に京都大学で開催されるConsortium for Southeast Asian Studies in Asia (SEASIA)に、長津が本プロジェクトのメンバーを主体として組織したパネル“Ethnic Re/formation at Margins: Negotiations with Global Institutions, NGOs and Missionaries in Insular Southeast Asia”が採択されている。2015年度秋までの調査状況はこのセミナーにおいて確認される。その報告は最終的な成果に結びつくことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
メンバーの一人は,民間の奨学制度により年度の前半期、長期在外研究(アメリカ合衆国)の機会を得ていた。そのため、同研究による海外滞在中に本プロジェクトの調査を実施した。また代表者は、予定していたインターネット上でのデータベース公開をコンピュータの技術的問題のため実施できなかった。こうした事情により助成基金には繰越が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度も代表者とメンバーが計画通りに予算を執行するよう務める。同時に、昨年度に在外研究等で予定通りの調査ができなかったメンバーは追加・補足の調査を実施する。また、代表者は国境・越境移動に関するデータベースの公開作業を昨年度に予定したとおりに進める。
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