研究課題/領域番号 |
25300033
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
佐藤 仁史 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60335156)
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研究分担者 |
太田 出 広島大学, 文学研究科, 准教授 (10314337)
山本 真 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20316681)
宮原 佳昭 南山大学, 外国語学部, 講師 (60611621)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近現代中国 / 太湖流域 / 自然資源 / フィールドワーク / オーラルヒストリー / 地方文書 / 江南 / 環境史 |
研究実績の概要 |
2015年度は以下の2つの活動を中心として調査・研究活動を遂行した。 第1は、海外における現地調査である。現地調査は史料収集と聞き取り調査からなり、8月中旬に10日間にわたって実施した。史料収集では、建徳トウ案館において1949年以降の林業、村による山林の管理、林学教育に関連する公文書を収集した。浙江図書館においては民国期の林産資源調査や林学教育に関する関連文献の収集を実施した。また、建徳市廟前村において訪問した元生産大隊会計担当者から、本人が執筆した10万字に及ぶ回想録とそのもととなった手記群の撮影をさせていただいた。加えて、2013年度に発見した建徳市大洲村の生産隊会計帳簿史料について、保管者より読解方法の手ほどきを受けた。 聞き取り調査では、2007年から2010年にかけて基礎調査を実施し、2013年に本格的な調査を開始した建徳市の山村における調査を引き続き実施した。主要な内容は、①1960年代~1980年代にいたる山林や山地における土地管理・利用、②集団化によって山林の管理・利用がいかに変化したのかなどについてである。2015年度に集中して行ったのは、様々な個人蔵史料を提供してくれた老農民に対する、当該史料に現れる土地利用の変遷に関する詳細な聞き取りである。これによって、提供された個人蔵史料の性質に対する理解が格段に深まった。 第2は、近代中国の林学知や林学教育に関する基本資料の収集と整理を行った点である。特に京都大学人文学研究所所蔵の『農林新報』を調査し、主要記事目録の作成を行った。当該新聞は民国期中国における農学教育の中心であった金陵大学農学院が刊行したものであり、林学知や林学教育のあり方を理解する上で極めて重要である。当該主要記事目録は公開を前提として作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山村と農村においては多くの収穫を得ることができ、全体としては所期の目標をほぼ達成することが出来たと評価できる。前者については、建徳市廟前村の生産大隊会計担当者から、本人が執筆した10万字に及ぶ回想録とそのもととなった手記群の撮影をさせていただき、当該地域社会の理解に大いに裨益した。後者については、共同体の行事に深く関連する芸能について、関係者から話を伺うことができた。
しかしながら、時間の関係上、デルタ地帯漁村の調査が手薄になってしまった点が2015年度の調査における不足点である。ただ、従来の調査において漁村に関する情報は十分に蓄積されているので、絶対的にデータが手薄である山村に各種資源を集中したことはやむを得ない事情であったと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の研究において浮上した課題は次の点である。
第1は、現地で収集した各種文献史料、とりわけ生産隊の帳簿史料及び個人的記録の整理・読解を進めることである。2013年度より3年間において相当量のトウ案を収集したが、手書き史料であることや、読解に専門知識が不可欠であることから、整理・読解が十分に進んでいないものもある。回想録や筆記などの個人的史料については基礎的な入力作業を終えたが、帳簿史料については現地の大学院生を雇用してデータの入力を行い、読解の環境を整えることが急務である。
第2は、口述記録と文献史料の突き合わせ作業である。参加者それぞれの目的意識や主題が明確化したことに伴い、聞き取り調査も文献調査もそれぞれ一定の成果・蓄積をみせているが、性質の異なる調査によって得られたデータの相互対照作業が不十分であるため、この点に注意して分析を進める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に次の2点である。①連携研究者の1人の日程調整がつかず、海外調査に参加することができなかったためである。②海外調査の日程が当初の計画より若干短くなってしまったためである。しかしながら、所期の目的は十分に達成することが出来た。
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次年度使用額の使用計画 |
以下の3つに使用する計画である。①2016年度における海外現地調査に充当する。②2013年度~2015年度に収集した個人的記録資料の整理・入力のために大学院生を雇用する。③国際シンポジウムの規模を拡大し、海外からの招聘研究者数を増やし、その招聘費用に充当する。
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