研究課題/領域番号 |
25300035
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
後藤 乾一 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 名誉教授 (90063750)
倉沢 愛子 慶應義塾大学, 経済学部, 名誉教授 (00203274)
山本 まゆみ 早稲田大学, 文学学術院, 客員准教授 (60709400)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本占領期インドネシア / 慰安婦 / オランダ植民地 / 日・イ外交史 / 海外日本人社会 / 第2次世界大戦 / 記憶 / 都市研究 |
研究概要 |
本研究は、歴史や社会から断絶され、「政治化」された慰安婦の過去を、彼女たちが生きた時代の社会に再編すべく、多角的に当時の社会を検証することにより、その社会状況ひいては社会心理の中で慰安婦がいかなる立場におかれていたかを詳らかにし、今後の歴史研究への提言を目指すものである。 本研究は、慰安婦に関する当時の資料が豊富なジャワ島都市部に対象を絞り、社会状況、軍政、経済、日本人と現地人との関係、日・イ外交、女性の状況を中心に史資料調査を外交史料館、国会図書館、早稲田大学、オランダ国立戦争資料研究所、オランダ国立公文書館、インドネシア国立図書館等で行った。特に平成25年度は、分担者、連携者及び研究協力者が、それぞれ担当を決めて資料調査を行う中、社会状況の変化を視覚的に理解できるように、戦前・戦中・戦後の詳細な都市図を作ることに着手した。地図を描くことで、距離感、移動の仕方、それぞれのコミュニティーの関係性が、明らかになるだけでなく、本研究担当者が、それぞれの調査結果を地図を使い説明することで、社会状況の変化もより明快になると考えたからである。日本占領期に戦地ではなかったジャワ島も、外島での戦況によって、「敵性国人」収容所の移動がしばしばあった。これは、単なる場所の移動ではなく、取り締まりが強化される社会空間も変わることで、周辺の社会心理にまで大きな影響を与えていたことが理解できた。また、慰安婦に関していえば、慰安所の取り締まりに関わった憲兵の部隊の性格によっても、心理状況は異なっていたことが見えてきた。本研究を進めるなか、戦前・戦中・戦後のインドネシアは、決してそれぞれが閉ざされた時間でも、政治権力の交代による分断された社会でもなく、人間関係という観点から検証すると、継続した関係が見えてきた。これは、戦後日本とインドネシアの関係に影響を与えるほど強いパイプであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究当初から役割分担を決め、分担者、連携者、協力者が着実に研究調査を進めることができた。平成25年度の前半で、本研究代表および分担者が中心となってパネル『Repainting the Japanese Occupation: Women and the Second World War in Indonesia』を組織し、国際学会International Convention of Asian Scholars (Macao)で発表したことにより、今後必要となるであろう研究が明確になった。結果として、戦前・戦中・戦後の人の流れを明確にするため、地図を通じた社会史を構築することで、社会空間の当時の感覚を体現できると考え着手した。また戦中・戦後の人脈に関する研究が、単に戦後の日本・インドネシアあるいは日本・オランダの外交に関わる研究に結びつくのみならず、人脈の有無が戦後に変容していく「日本占領期インドネシア」の記憶に少なからず影響したのではないかとの仮説も見出すことができた。 地図作成においては、史資料のみならずデータ管理の面でも、単独で調査研究をまとめることが難しいため、2~3人で海外調査を行ったことは、単に研究の意見交換の場が増えただけではなく、研究調査の効率性もあがったため、当初の計画通り以上に調査を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究担当者が各自研究を進めていくことに力点を置き、定期的な研究会を開催する機会がなかった。本年度からは、来年度が最終年度であることを念頭に、研究会を定期的に開き各自の研究の進捗具合を発表することで、継続したピアレビューができると考えている。このことは、研究最終年度に形ある成果を残すために、最も効果が期待できる運営と考えている。 海外調査に関しては、平成25年度の海外研究調査の経験から、研究者が複数人で同時にオランダ調査を遂行することで調査の効率性を上げると同時に現地で即日に行える意見交換により史資料の理解も深まることを考えている。さらに、調査時期にオランダの研究機関とシンポジウムを開催することで、日本占領期インドネシア社会の状況を多角的に検証していく機会を作る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は海外調査に重きを置いた研究であるが、研究初年度の平成25年度に関しては、国内調査を優先し、国内所蔵の資料を海外調査で収集しないよう、データーベース化を進める、海外調査の効率化を考えたため、渡航費があまり多額に発生しなかった。 平成26年度に関しては、代表、分担者、連携者および調査協力者が、オランダを中心とした海外調査を2~3週間程度の時間をかけて行う。また、オーストラリアおよびイギリスの公文書館調査も、1~2名で行う予定である。
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