研究課題
イルクーツク国立大学には、マリタ遺跡から出土した哺乳動物や鳥類の骨が保管されている。これらのすべてを網羅した遺物リストはないとされているので、分担者2名と共に、2014年1月に調査を行った。収蔵資料は膨大なものであったが、古い時代の発掘資料は、層位、出土地点などが明らかでないものが多い。そこで、1995年以降の出土物で、出土層位、出土地点が記録されている動物骨資料について、リストを作成し、動物種、部位の同定を行った。その内、20資料について、年代測定用資料を採取した。電動精密グラインダーを用いて、それぞれの骨の、保存状況を勘案しながら、0.2~3gの試料を採取した。摩擦熱によって、採取試料の温度が上昇すると、測定に用いる骨コラーゲンが変性する恐れがあるので、温度が上昇しないように、注意深く作業を行った。現在、これらの試料について、優先順位を付けて年代測定試料の調製、測定を進めている。コラーゲンは比較的よく残っているようである。また、マリタ遺跡における、これまでの発掘区画と、それに伴う出土遺物(彫像)について集成し、ロシア側共同研究者である、イルクーツク国立大学Lipnina 准教授が作成した平面プランを確認した。これに基づいて、6~8月に小規模な発掘を行うことを計画している。このため、2014年5月に研究分担者2名、Medvedev教授、Lipnina准教授とともに、現地で発掘地点の探索、決定を行う調査を具体化した。
2: おおむね順調に進展している
研究は、おおむね順調に進んでいる。日本・ロシア協働研究の形を取っているので、双方のスケジュールを調整する上で、若干の困難がある。また、平成25年になり、ロシア科学アカデミーが予算削減を行うとの情報があり、ロシア側研究者のポスト削減が心配されたが、今のところ、その影響は現れていない。初年度に予定されていた、イルクーツク国立大学が収蔵している動物骨のリスト化、年代測定試料の採取も問題なく行われた。調査が平成25年1月になったため、年代測定について、年度末の繁忙期に入り、測定がやや遅れることになったが、夏の小規模発掘までには、測定値を得ることが出来るので、影響はないものと思われる。
今年度の重要な研究課題は、2点ある。一つは、夏に予定されている小規模発掘である。今年は、現地の積雪が少なく、早い時期に開始できるとの情報を受けている。5月半ばに、代表者と研究分担者2名が、Medvedev教授、Lipnina准教授とともに現地に入り、現地で発掘地点の探索、調査を行い、発掘場所を設定し、発掘期間、人員配置などの詳細を検討する予定である。第二に、国立歴史博物館(モスクワ)、エルミタージュ美術館が収蔵する彫像から、年代測定用試料を採取、年代測定を行うミッションである。両館の収蔵資料を分析するために、ロシア側研究者の助けを受けながら、共同研究契約文書を作成するための最終交渉を行う予定である。これまでにマリタ遺跡から出土したヴィーナス像、鳥像などの彫像で、年代測定されたものは、代表者らが測定した1点のみである。これまでの交渉では、特に大きな疑義が提起されていないが、場合によっては、未成品などから試料採取を行い、おおざっぱな年代観を提示した上で、完型品についての研究計画を提示した方が得策かもしれない。ロシア側研究者と検討したい。人類学・民族学博物館(クンストカメラ)に収蔵されている埋葬幼児骨の一部とされる人骨資料についても調査を行う。
基金分で「その他」経費として計上しているのは、主として年代測定経費である。現在、本学年代測定室では、学外の分析機関と協働で年代測定を行っている。そのため、1試料あたり¥36,000の測定実費が徴収される。当初より、年代測定に必要な経費は、年度をまたいで使用する必要があると考え、基金分を充当している。平成24~26年度にわたって、使用することを想定している。また、ロシア渡航費用、2回分を見積もっていたが、現地調査を今年度に見送ったため、基金分として取り残した。その他経費は、平成24~26年度に行われる年代測定経費として使用される。初年度1月に採取した動物骨の年代測定は完了しておらず、年代値の報告とともに、請求が行われる。また、新たに小規模な発掘で出土する資料、および、モスクワ国立歴史博物館、国立エルミタージュ美術館の資料50資料程度の測定実費を想定している。旅費は、マリタ遺跡の発掘に関わる旅費と、上記収蔵資料の資料調査、分析試料採取のための旅費として使用される。
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Quaternary International
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