研究課題/領域番号 |
25300039
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
清水 信行 青山学院大学, 文学部, 教授 (00178980)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 沿海州 / 渤海土城 / クラスキノ土城 / 発掘調査」 |
研究実績の概要 |
平成26年度の調査は①瓦敷き道路状遺構の上部にある小石を含んだ砂状土の範囲を確認する。②瓦敷き道路状遺構の全体を検出し、その幅を確認する。③東門甕城内門の全容を明らかにするという①~③を目的として行われた。①、②の目的については、ほぼ順調に調査が進められ、瓦敷き道路状遺構の全容を明らかにし、その幅を確認した。また、轍と考えられる2条の凹みを検出し、その幅が約1.1mで、東に行くにしたがって広がり1.4mになっていることを確認した。③の目的については、門を横断するセクション図を完成し、瓦敷き道路状遺構の上に道路状遺構がもう一枚あったこと、瓦敷き道路状遺構が内門の中央を通過していることをセクション図の上でも確認できた。以上の他に、今回は城壁本体の基底部下約50cmまで掘下げることが出来たが、-4mのレベルまで掘り下げると白磁、土器片とともに、加工を施した板状木製品が検出された。これらの遺物は、城壁本体が築かれた年代の上限を決定する根拠になりうるものであり、大きな成果と言える。調査成果のもう一つは、甕城内の城壁本体の構築法についてである。城壁本体の構築は、同時期のものでも外見や構築法に差異があることが予想された。 出土遺物の成果もある。今回出土した板状木製品は、沿海州の渤海遺跡の出土品の中でも、非常に珍しい遺物である。白磁瓶の破片は口縁部を残しており、釉薬にも特徴がみられることから、生産地の同定が可能である。また、胴部に刻書のある無頸壷または短頸壷もあり、この資料も珍しい。2枚にはがれた平瓦は、その大きさは縦の長さが16cmほどである。これが粘土板桶巻き作りであるとすれば、渤海の平瓦は粘土紐を桶に巻いて作る例が知られ、これまで粘土板桶巻き作りの確実な例はクラスキノでも見られなかった。以上、今回の調査によって遺構に関しても遺物に関しても大きな成果をあげることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
26年度の予算では、甕城内の南側城壁本体の基部に設けたサブトレンチの調査で、城壁本体の基底部下まで掘り下げ、最下層から板状木製品、白磁片、木炭編を検出することができた。この遺物の検出により、城壁が築造された年代を推定する根拠を得ることができた。ただ、遺物を日本に持ち帰れず、調査報告書の作成のために、遺跡のキャンプにおいて遺物の整理作業を行った。今回の出土遺物の重要性からその作業に時間を要したため、予定した調査期間内に発掘作業のすべてを終えることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間内の達成目標の一つは、クラスキノ土城の東門甕城内の入り口の構造を確認することである。今後はこの入り口部分の綿密な発掘調査により、この入り口が築造された最初の構造を明らかにし、それが時代と共にどのように改築され、あるいは増築されていったのかを確認していく。さらに、甕城内に検出された瓦敷き道路状遺構がどのように城内に続いていくのかを確かめる予定である。また、道路状遺構も何度か修復されていることが分かっており、甕城内の入り口の増改築と道路状遺構の改修がどのように連動していくのかも明らかにしていく予定である。その作業を通じて、クラスキノ土城の築造年代を明らかにし、沿海州の他の遺跡との関係を考察することによって、本土城の機能と性格を最終的に明確にしていく予定である。また、ロシア研究者を招請し、『渤海を掘る11』を開くことによって、内外の渤海研究者に調査成果を公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度予算での調査では、甕城内の城壁本体南側の基部にサブトレンチを設け、掘り下げた。この後、甕城内門のセクションベルトをはずし、甕城内の南側城壁本体の北面を検出して甕城内門の全体を明らかにする予定であったが、遺物の整理作業に時間を要したこと及び調査期間が短かったため、計画していた全ての発掘調査を実施することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
城壁本体の構築年代と甕城内門の全体の構造、瓦敷き道路状遺構の城内における様相を明確にするため、平成27年度にも調査を行う必要が生じ、次年度使用額が発生した。クラスキノ土城東門における発掘調査及びシンポジウム『渤海を掘る11』開催のための費用として使用する。
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