研究課題/領域番号 |
25300042
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
片岡 修 関西外国語大学, 国際言語学部, 教授 (90269811)
|
研究分担者 |
石村 智 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 研究員 (60435906)
竹中 正巳 鹿児島女子短期大学, 生活科学科, 教授 (70264439)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | マリアナ諸島 / 先ラッテ期 / ラッテ期 / ラッテストーン / 巨石文化 / ミクロネシア連邦 / ポーンペイ島 / ナン・マドール遺跡 |
研究概要 |
太平洋の各地域で、イースター島のモアイ石像に代表されるような巨石文化が営まれたことが知られている。ミクロネシアでは、マリアナ諸島のラッテストーン、ヤップ島のストーンマネー、パラオ島のモノリスとストーンフェイス、ポーンペイ島のナン・マドール、コスラエ島のレロなど文化と社会の表象としてさまざまな先史時代の巨石遺跡が残されてきた。 本研究課題は、各地の遺跡の比較研究に基づき巨石文化の成立と社会複雑化のプロセスを解き明かすことを目的としている。平成25年度には「仮説検証的事例研究」班はグアム島のハプト遺跡の発掘調査を、「総合的比較研究」班はユネスコ世界文化遺産登録に向けて動き出したミクロネシア連邦ポーンペイ島のナン・マドール遺跡に関する遺跡踏査と口頭伝承の収集を行った。 ハプト遺跡では、5対のラッテストーンを持つ建物跡の墓跡の発掘に加え、村落の造営時期を確定する目的で15基のうち6基の建物跡にテスト・ユニットを設定した。出土遺物や墓跡は、高床式建物跡の空間利用を理解する上で重要な資料となっている。炭素年代測定の結果は、先ラッテ期の居住がAD. 20-260とAD. 650-880の断続した二次期に営まれた遺跡であることを示唆した。また、ラッテ期に相当するAD.1270-1680の年代は、先ラッテ期とラッテ期の間に継続性が認められないことを明らかにした。 一方、ポーンペイ島では、全島支配したシャウテレウル王朝の宗教と政治と儀式のセンターであったナン・マドール遺跡に関する口頭伝承の収集を行った。また、ナン・マドールと関係があったと伝えられるメチップ地域のリーフ島であるムトコロス島の遺跡踏査を実施し、少なくとも3遺跡を新たに発見した。全島支配の形態や構造を理解する上で、各地域の考古学および文化人類学的研究が不可欠である。その意味で、ムトコロス島の調査は重要な資料を提供したと言えよう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施した3万平方メートルにおよぶ広大なハプト先史村落遺跡の発掘調査で、村落全体の営造時期を明確にできた意義は大きい。プロジェクト全体の研究目的を考慮しても、今年度の調査は順調に達成できたと考えている。また今年度の研究が、26年度の研究調査内容の方向性を明確にしたと言う点でも達成度が高かったと評価している。 全建物跡にテスト・ユニットを設定することが理想的であるが、少なくとも村落を構成している3グループの各2棟ずつの建造物跡に設定できたことは、今年度の調査予定をほぼ達成したと言えよう。
|
今後の研究の推進方策 |
「仮説検証的事例研究」班は、グアム島のハプト遺跡の性格をより明確にすることを目的に、ハプト遺跡の調査と共に、比較研究のためにグアム島内だけでなく近隣の島々の詳細な遺跡の踏査を行う。特に、首長制を背景に築かれた95の人工島から成る巨石複合遺跡ナン・マドールを理解するために、遺跡の構造の詳細な調査に基づく各人工島のインベントリーを作成したい。同時に、将来の遺跡保存に役立てることができる基礎資料として、各人工島の保存状況に関する調査を行い、活用できる形で調査成果をミクロネシア連邦政府歴史保存局に提出したい。 「総合的比較研究」班は他島との巨石文化の比較研究目的で、13,000個のストーンマネー(石貨)が残されているヤップ島で調査を実施する。ヤップ島は、ヤップ帝国の名の下に東方の複数の環礁島とサウェイと呼ばれる朝貢交易を成立させていた。ヤップ島内だけでなく、サウェイ交易圏における社会構造と巨石遺物であるストーンマネーの関連について現地で聞き書き調査を実施する。 両班共に、昨年度からの継続作業として資料(文献資料、古地図、古絵図など)を網羅的に収集し、PDF化を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
各班のフィールドワークには少なくとも3週間程度の渡航期間が必要で、分担者に加え複数の協力者(大学生を含む)が不可欠なため、予算は航空運賃、宿泊費、人件費が主要な使途内容となる。また、発掘調査から得られた資料の同定料金(専門研究機関や専門家に依頼)が占める予算の割合が比較的大きいことを想定している。 主要な予算使途内容は次の通りである。 (1) 旅費(航空運賃・宿泊費)、(2) 人件費(日当・謝金)、(3) 現地でのレンタカー賃借料、(4) その他(動物遺存体などの同定依頼)、(5) 調査用機材(手許の機材を継続使用し、不足の機材のみ購入)
|