研究課題/領域番号 |
25300048
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
増田 研 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (20311251)
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研究分担者 |
波佐間 逸博 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (20547997)
宮地 歌織 佐賀大学, 男女共同参画推進室, 助教 (40547999)
山本 秀樹 帝京大学, 公衆衛生学研究科, 教授 (50243457)
野村 亜由美 首都大学東京, 健康福祉学部, 准教授 (50346938)
宮本 真二 岡山理科大学, 地球環境科学部, 准教授 (60359271)
田川 玄 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (70364106)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アフリカ / 人口高齢化 / 高齢者ケア / 社会保障 / 社会人類学 / 公衆衛生学 |
研究実績の概要 |
平成27年度は二度の国内会議を実施したほか、分担者がそれぞれのフィールドにおいて調査活動に従事した。渡航したフィールドはケニア、エチオピア、ウガンダ、ザンビアである。また比較対象としてのアジア地域の検討も行った。2015年5月には日本アフリカ学会において高齢者をテーマとするフォーラムを開催した。 増田はケニア南東部において農村の高齢者の生活と健康状態に関する予備調査を実施したほか、民間研究機関との意見交換を行った。またエチオピアでは首都アディスアベバにおいて、高齢者支援を行う国際NGOおよびローカルNGOを訪問し聞き取り調査を実施した。山本はザンビア国ルサカ市において「都市部で高齢者を支える共助」を課題とし、支援活動を行っているCBOのリーダーらとワークショプを実施した。波佐間はウガンダの難民居住地において高齢者ケアのグローバル化の推進装置としての国際緊急人道支援との接点で高齢の「ケア化」が進展していることを明らかにした。宮地は文献研究、ならびにケニア西部のキシイ県、海岸部のクワレ県を対象とし、高齢女性に対するケアの現状に関する聞き取り調査を行った。田川はエチオピア南部オロミア州ボラナゾーンにおいて牧畜民社会ボラナの老人のケアについての調査を行った。老人のケアの様態にはジェンターにおける差異があり、男性に対しては妻によるケアが重要であるのに対して、女性に対しては孫や子ども世帯によるケアが重要であることが明らかになった。 宮本は南アジア地域の高齢化問題とアフリカ北東地域の高齢化問題の共通性・異質性に関する問題群を精査するため、大陸間の広域比較研究の予備統計調査を実施した。野村は津波被災地であるスリランカ南西部において、高齢者の生活習慣と健康状態に関する調査を行った。また、スリランカ国内および日本国内のスリランカ医師に研究協力を依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者および分担者は、おおむね予定通りの調査を実施している。プロジェクト全体としては、当初計画していたケニア海岸地方における調査活動を、治安状況を理由として縮小させているが、計画全体を滞らせるものではない。研究活動全体を通じて、(1)都市部、農耕地域、牧畜地域のそれぞれのケアを成立させる社会的要件が異なること、(2)東アフリカ各国において近年、人口高齢化への対応準備が始まりつつあること、(3)高齢者支援に特化したNGOや介護施設への関心がいまだに弱いこと、(4)経済状況や親族構造に応じて高齢者の社会的布置が異なり、それに応じた多元的な制度設計が必要とされる一方、在来の社会システムから学ぶべき点への配慮が欠かせないこと等が明らかになっている。平成28年度(最終年度)は、こうした知見を踏まえて、エチオピアにおいて国際研究集会を開催し、調査活動そのものの発展へとつなげたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は本研究課題の最終年度であり、当初計画にあるとおり、国際研究集会を開催する。開催地としてはエチオピアの首都アディスアベバを候補としており、アディスアベバ大学、国際NGO、ローカルNGOのほか、ソーシャルワークを学ぶ学生などをも交えた研究交流の機会とする。この国際研究集会の成果は報告書として刊行する予定である。 この国際集会の準備のために国内における研究会を少なくとも一度開催するとともに、必要に応じて現地調査の継続を進める。 また、日本アフリカ学会の学術誌である『アフリカ研究』に、アフリカの人口高齢化をテーマとする特集記事を掲載する準備を進めている。実質人は本研究課題の分担者のほか、学部識者を交えた執筆陣を招く。 本研究課題はようやくその問題群が整理された段階にあり、アフリカにおける人口増加と長寿命化の急速な進展と、社会変容のなかにあって、継続的な調査と社会提言を目指し研究プロジェクトの拡充が必要であると考えられる。そのための長期的な研究計画の立案もまた今年度の活動項目のひとつである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には現地調査活動はおおむね順調に進んだが、一部で日程調整等の問題が生じ、訪問できなかった場所があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画のとおり、平成28年度にはシンポジウム棟の国際研究集会を実施することになっており、研究代表者および分担者のほとんどが東アフリカにおける集会およびワークショップに参加する予定である。また現地における補足調査が必要な分担者もいるため、配分額の多くを旅費に充てる計画である。
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