研究課題/領域番号 |
25300056
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
杉本 良男 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (60148294)
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研究分担者 |
関根 康正 関西学院大学, 社会学部, 教授 (40108197)
杉本 星子 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (70298743)
A Sagayaraj 南山大学, 人文学部, 准教授 (10434606)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 南インド / 経済自由化 / 構造変動 |
研究概要 |
インド社会の構造変動に関して以下のような研究を実施した。 1. 南インド、タミルナードゥ州タンジャーウール県クンバコーナム市および近郊農村において共同の村落調査を実施した。また、2011、12年に同地域で実施した調査資料の整理作業を行い、1990、91年の調査資料と比較分析を行った。その結果、とくに女性の教育水準の変化が著しいこと、耐久消費財の急速な普及に政治的要因が強く働いていることなどが、実証的に明らかになった。 2.チェンナイ市のMadras Institute of Development Studiesにおいて南インドにおける工業発展に関する資料を収集し、また1980年代末に実施したティルチラーパッリ県の村落社会調査資料を分析し、クンバコーナム地域と同様、教育水準の大幅な向上が見られることが実証的に明らかになった。 3.タミルナードゥ州各地におけるキリスト教におけるカースト問題について調査を実施し、とくに改宗法の施行以後、キリスト教内部でのカースト問題が一層先鋭化している実態が明らかになった。 4. ケーララ州起源の神霊信仰が、デリー、バンガロールなどの大都市、そして海外にまで広がり、それがまたケーララ社会に影響を及ぼし、さらに世界を巡るような環流現象が顕著であることが明らかになった。また、ナグプールのマハール・カースト仏教徒の集住地区における調査により、改宗をめぐって元不可触民ヒンドゥー教徒との緊張関係が生じていること、グジャラートにおいてヒンドゥー教とカーストとの連関調査によりグローバル化の影響が大きいこと、などが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象村落における世帯聴取調査資料をエクセル・データ化し、分析を進めるとともに、補充調査を実施して資料の充実を図っており、実証的研究としての質が飛躍的に高まっている。また、クンバコーナム地域、ティルチラーパッリ地域において経済自由化前に実施した調査資料との比較検討が進み、さまざまな面での構造変化の実相が明らかになってきている。さらに、イギリス、東南アジア、中東各地域の在外インド人の活動などによって、グローバル化の影響が国内の大都市から地方都市を経由して農村にまで及んでいることも視野に入ってきた。その意味で、「比較」研究の実が上がり、構造的社会変化について説得的に実証する見通しができている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 村落調査資料の分析をさらに進め、社会変化の実相を総合的かつ説得的に実証する必要がある。 2. グローバル化の影響について、在外インド人社会なども対象に、比較検討する必要がある。 3. 相変わらずインド社会を基礎づけているカースト制の現代的様相について、さらに質的な調査研究を進める必要がある。 4. 研究成果の公表について、検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
全体に現地調査が予定より順調に進み、日程が若干短縮できたのと、航空運賃も節約できたため。 現地調査費用と資料整理謝金にあてる。
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