研究課題/領域番号 |
25301002
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
後藤 正幸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40287967)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ネパール / 女性ビジネス / 持続可能なツアリズム / 経済発展 / ネットワーキングシステム / 循環型発展社会 / 環境問題 / 天然資源 |
研究実績の概要 |
本研究では,発展途上国の一つであるネパールにおける循環型発展社会システムを実現するため,環境や社会に配慮しつつ,経済的に継続発展可能なネパール型の環境ビジネスモデルを提案することを目的とし,現地におけるフィールド調査をベースとした研究を継続している。平成27年度においても前年度に引き続き,農業や商業に携わる女性事業団体の調査や観光産業の持続的発展のためのビジネスモデルに関する調査と研究を計画し,平成27年3月の現地調査で収集したデータに対する分析を押し進めた。これらの現地フィールド調査を行った結果は,データを持ち帰り,分析と検討を加えたうえで,国際会議にてその成果を報告している。 一方,平成27年4月にカトマンズを直撃した大地震がネパールの経済と社会に甚大な損害を与えると共に,後半は憲法制定に伴う政情不安により,深刻な物資不足が発生した。これらの災害と政情不安は,ネパールにおける循環型発展社会システムを実現するために極めて大きな障害として認識されたため,本研究の対象範囲として,これらの問題を取り上げる必要性が生じた。このような背景に基づき,本研究チームにおいても,地震の影響と災害対策,並びに政情不安の影響とその対策という観点からフィールド調査を再検討し,平成28年3月にカトマンズとサウラハを中心としたフィールド調査を実施すると共に,ネパール人を交えたグループ討論により課題を明確にした。これらの調査データは現在分析中であり,順次,国内学会や国際会議にて継続的に成果を発表する予定である。また,ネパールにおける循環型発展社会システムを題材とした教育プログラムを設計し,カトマンズとサウラハの2箇所の学校において実施した。その成果についても,現在分析中であり,順次,成果を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,研究代表者,並びに研究分担者の他,研究代表者と研究分担者が,両大学のネパール研修プログラム参加者を中心に組織しているネパールジャパンプロジェクトのメンバーが研究活動に参画し,継続的に協力をしている。また,ネパールのNational Collegeによる強力な研究サポートを受け,毎年のネパール現地におけるフィールド調査研究の企画・立案から,調査プログラムの実施までを,これらの協力組織との連携のもとで実施している。本研究に対して,ネパール現地からの研究協力を頂いていているNational Collegeには,ネパール語による現地データ収集の他,ネパールの文化的・社会的背景を考慮した知見や知識の提供を受けており,本研究の進捗に大きく寄与している。 平成27年4月に発生した大地震と平成27年秋以降の政情不安の影響から,一時,ネパールにおける現地調査が困難と予想される時期が続いたが,半年間のフィールド調査の準備期間を経て,平成28年3月にネパールのカトマンズとサウラハにおける現地調査を実施することができた。この現地調査では,予定数以上の現地住民へのアンケート調査結果を持ち帰ると共に,ネパール人を交えたグループディスカッションや現地視察に基づく情報収集などを実施し,今後の研究計画に向けた多くのノウハウ蓄積に繋がったと考えられる。 本研究チームは,国内学会や国際会議における研究発表にて成果発信を継続しており,また現在も平成27年度に収集した現地フィールド調査を分析し,学会論文や研究発表の準備を進める段階にあることから,研究は当初の予定通り,順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,当初の研究実施計画で設定した (1) ネパール企業、NGOの事業経営評価のための評価指標の提案と実証的検証,(2) ネパールの女性起業家や女性マネージャーによる事業経営の環境ビジネスモデルの評価,(3) ネパール現地の環境配慮型企業、環境NGO と協力した循環型ビジネスモデルの構築と評価,(4) 電力供給不足環境下の省電力経営モデルの提案と評価,(5) ネパール型事業経営のためのネットワーキングモデルの提案とその評価,という個別研究課題について,現在の進捗状況と今後の研究の必要性について再評価を行い,今後の2ヵ年の研究計画を再検討する。その際,平成27年に発生した大地震と政情不安の影響を考慮し,本研究のアウトプットが最大化されるよう,現状に見合った個別研究テーマの設定を行う。特に,ネパール型の循環型発展社会システムを構築するためには,脆弱な災害対策や政情不安への対策は必要不可欠であることが明らかとなったため,これらの重要課題についても研究を充実させる予定である。一方で,ネパールの女性起業家や女性マネージャーによる事業経営の環境ビジネスモデルの評価については,女性の地位が相対的に低いネパールにおいて,大変重要な課題であるとの認識から継続的に調査研究を進めており,平成28年度も強力に調査と研究を進める。さらに,ネパールは農業と観光業が重要産業であることから,これらの二大産業の持続的発展を見据えたビジネスモデルのあり方について検討を行う。 また,今後もNational Collegeとの研究協力体制を維持し,現地調査データの収集を依頼すると共に,平成29年3月に予定するネパールでのフィールド調査研究の設計を共同で行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度前半は4月のネパール大地震の後、National Collegeに現状調査等を依頼し,8月に来日して共同研究活動を行った。年度後半は、政情不安に伴う物資不足の問題が発生し、ネパール国内の経済活動が麻痺したため,情勢を見守ることしかできない期間が続いた。しかし直前の情勢回復により、辛うじて3月の現地調査研究を実施できたものの、年間を通じて臨機応変な対応を迫られた1年であったため、当初予定通りの予算執行ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,ネパールの情勢も回復が期待され,ネパールでの現地調査を実施予定である。また本研究チームもこれまでの研究活動を通じて,研究成果を公開するフェーズに達しており,学会や国際会議,学会誌への論文投稿による成果発表を推進する予定である。そのための学会参加旅費,学会誌への論文投稿にかかる論文掲載料での支出を計画する。
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