研究課題/領域番号 |
25301010
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤井 勝 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (20165343)
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研究分担者 |
平井 晶子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (30464259)
白鳥 義彦 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (20319213)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際結婚 / 東アジア / 地方社会 / 家族 / 移動・移住 / 社会学 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究で重視する「家族の再生産」、「グローバルな世帯保持」、そして地方社会への影響・貢献という視点をふまえつつ予備調査等を実施し、以下の知見等を得るという成果があった。 (1)東南アジアや中国から国際結婚女性を受け入れる地方社会については、①国際結婚女性のネットワークを利用した結婚が増加している、②外国人女性との結婚は男性の消極的選択とは限らず、国際結婚を積極的に好む傾向もある、③国際結婚女性のネットワークは個別の家族を超えた相互扶助的な役割を果たしている、④地方で国際結婚をサポートする組織(NPOなど)が増加の傾向にあり、子供の教育問題などで重要な役割を担っている、⑤長期に結婚移住する女性のなかには生活する地方社会に自らの居場所を作り、地方社会へも貢献する一方で、実家との経済的繋がりは弱まることもある等である。 (2)国際結婚女性を送り出す東南アジア等の地方社会については、国際結婚に至る経緯が想定される以上に多様である、結婚先で同一地方出身者がネットワーク形成している、外国人男性が女性の出身地域で居住するパターンでは(年数を経て夫と帰国するケースも含む)「グローバルな世帯保持」や地方社会への影響や貢献の形は複雑化していること等である。 さらに、海外研究協力者等の参加を得てワークショップ等を開き、国際結婚家庭の子供の問題(教育やアイデンティティ)、中国・台湾における女性の結婚意識や老親扶養の現状など、東アジアにおける国際結婚・家族・地方社会の関係をより深く認識するという成果を得た。また比較のための調査研究の対象であるフランスでは、東アジアと同じく、年間の国際結婚件数が全結婚件数の1割程度であるものの、その内容に相当の差異があることもわかった。 以上の調査研究、そして国際結婚質問紙調査の収集・検討にもとづき、平成26年度より順次実施する質問紙調査の準備を進めることもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、国際結婚を受け入れる韓国・台湾・日本における地方社会の調査対象地、および国際結婚女性を送り出す東南アジア・中国の地方社会の調査対象地をほぼ確定することができたからである。とくに前者の調査に関しては、平成26年度より順次質問紙調査をする計画であるが、海外研究協力者や各種機関・組織の協力によって、質問紙調査を前提とした調査実施が可能であることが確認されているところである。 第二に、国際結婚における「家族の再生産」と「グローバルな世帯保持」、そして国際結婚が地方社会にもたらす影響や貢献といった本研究の分析の基本的な枠組みにかかわる特質を、予備調査等を通じて、それぞれの地方社会の文脈において捉えることができたからである。加えて、新しい事象の生成や展開も同時に観察・把握することができたので、本研究をよりレベルアップするために必要な条件や課題も鮮明になっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度より、聞き取り調査と質問紙調査を並行して行うことによって研究を推進する。とくに質問紙調査において、原則として同一項目の調査票を用いて韓国・台湾・日本で調査を実施する。平成26年度は日本で、平成27年度は韓国と台湾で実施する計画である。 そこでは第一に、3カ国・地域で共用できる質問紙をどのように作成するかが一つの課題となる。このようなタイプの国際結婚調査には前例がないので、調査票作成のために海外の研究協力者と緊密な連携体制を構築する。第二に、予備調査で明らかになったように、地方社会では国際結婚家族が想定した以上に広範囲の地域内に分散して居住しているので、その点を十分に克服して調査を成功させることが課題となる。この点に関しては、調査対象地の機関や組織、つまり日本ではNPO法人「にほんご豊岡あいうえお」、韓国では忠清南道女性政策開発院、台湾では国立金門大学との連携を十分に機能させる。 同時に、本研究は、国際結婚を受け入れる地方社会と、国際結婚女性を送り出す地方社会を相互に関連づけながら国際結婚を全体的に解明するという課題をもっているので、双方の地方社会で獲得した研究情報・成果を研究グループ内で十分に共有することが課題となる。そのために研究グループ内での意見交換・議論を積極的継続的に実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査における緒経費(謝金、調査協力費、車借り上げ代など)を節約したことによるものである。そして、これらの節約は、下記のように、平成26年度に調査経費が想定以上に必要になることを見越したものである。なお当初予定した現地調査の一部が諸般の事情により実施できなかったのも理由の一つである。 主には現地調査、とくに質問紙調査の実施に使用予定である。平成26年度は質問紙調査を実施する計画となっており、平成25年度の予備調査を通じて、当初想定していた金額以上にこの質問紙調査の経費が多く必要と見込まれるので、その部分に対して多くを充当する計画である。
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