研究課題/領域番号 |
25301015
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五百籏頭 薫 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (40282537)
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研究分担者 |
箱石 大 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60251477)
市川 智生 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30508875)
稲吉 晃 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70599638)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 条約改正 / ドイツ / 明治 / 領事裁判 / 行政権 |
研究概要 |
2013年度には、ベルリンに所在するGeheimes Staatsarchiv Preussischer Kulturbesitz(プロイセン枢密文書館)、Das Bundesarchiv-Berlin-Lichterfelde(ベルリン・リヒターフェルデ連邦文書館)、Auswaertiges Amt-Politisches Archiv(外務省政治文書館)への調査はほぼ想定通り進んだ。また、スキャニング・データの購入による史料収集にも一定の進展を見た。 そのうち、調査についての収穫を三点挙げる。第一に、日本の条約改正関係の簿冊が予備調査の印象を裏切らず、大量かつ充実していたことを確認し、その全貌をほぼ把握できたことである。第二に、1870年代後半から80年代にかけての交渉についての文書の所在が目録からは発見できなかったのが、簿冊内容の調査により発見できたことである。第三に、日本の条約改正問題を所轄する外務省と他省との交渉経緯を示す簿冊群も見つかった。これによって、政府内での交渉過程が立体的に再現できることになる。このように良好な残存状況はまれなことであり、ドイツ史料調査の意義を大きく高めるものである。 収集と分析に協力する人的ネットワークもベルリン自由大学やハレ大学を中心に広がった。さらに、10月に開催されたハイデルベルク大学のアジア・ヨーロッパ学環(Cluster of Excellence Asia and Europe in a Global Context)の年次総会において研究構想と進捗状況の報告を行い、きわめて高い評価と助言者を得た。 冒頭に述べた史料収集については想定よりスピードが遅いという問題点があったが(原因は「現在までの達成度」において記す)、スキャニングを待つ時間を利用して調査や分析を進めることができたため、このような評価を得たものと理解している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スキャニング・データの購入による史料収集について、問題があった。というのも、2013年度の調査対象であったGeheimes Staatsarchiv Preussischer Kulturbesitz(プロイセン枢密文書館)、Das Bundesarchiv-Berlin-Lichterfelde(ベルリン・リヒターフェルデ連邦文書館)、Auswaertiges Amt-Politisches Archiv(外務省政治文書館)のうち、前二者については、指定業者によるスキャニングによってしか史料の収集を認めていない。しかしこの業者の作業スピードに制約があったため、想定していたほどの分量の収集が行えなかった。 しかしスキャニングを待つ間に史料の所在調査や予備的な内容の分析は予想以上に進行した。また、このことに助けられ、ドイツならびに日本での研究者ネットワークの形成と協力者の確保は想定以上に進展し、研究計画初年度でありながら、本研究プロジェクトへの高い評価と期待を得ることができた。 2013年度に未着手であったのは、軍事関係の文書館たるDas Bundesarchiv-Freiburg im Breisgau(フライブルク連邦文書館)への調査である。だが2014年9月に行うことを決定し、準備を進めている。 以上から、「(1)当初の計画以上に進展している」に該当するものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
所定の研究期間内に質・量ともに充実した史料収集を達成する展望を得ることが最も重要な課題である。そこで第一に、調査着手済の文書館に対してはその処理能力に応じた発注・購入を繰り返すことで着実に収集史料を増やし、研究期間内にどの程度の分量のスキャニング・データを入手できるかの見通しをつける。第二に、これら文書館に所蔵される関連史料のリストを完成させ、何を収集すべきかを特定する。 一方で、これら史料館の処理能力に頼るだけでなく、第三に、調査する文書館の種類を増やす。軍事関係の史料を所蔵するフライブルク連邦文書館は一つの有力候補である。また、ドイツの研究者の助言はほぼ一致して、連邦レベルの文書館にとどまらず、旧ハンザ都市を中心とする市文書館の史料が重要であると指摘するものであった。そこで、少なくともハンブルク市文書館の調査に着手したい。 以上のようにして収集した史料について、1)形態・件名など基本情報を抽出し目録を作成し、2)研究資料としてどのような利用が可能かを検討する。1)の目録作成については、ドイツ語に堪能な大学院生の助けを得て速やかに作業を進める。2)の収集史料の研究利用については、本研究ではパイロット的なものにとどめるが、年1~2回のワークショップを開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
史料収集の対象とした文書館の多くは、指定業者によるスキャニングによってしか史料の収集を認めていない。しかしこの業者の作業スピードに制約があったため、想定していたほどの分量の収集が行えなかった。 第一に、調査着手済の文書館に対してはその処理能力に応じた発注・購入を繰り返すことで着実に収集史料を増やし、研究期間内にどの程度の分量のスキャニング・データを入手できるかの見通しをつける。第二に、これら文書館に所蔵される関連史料のリストを完成させ、何を収集すべきかを特定する。 一方で、これら史料館の処理能力に頼るだけでなく、第三に、調査する文書館の種類を増やす。 このようにして所定の期間と資金により望みうる質量ともに最も充実した史料の収集を推進する。
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