研究課題/領域番号 |
25301017
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中村 逸郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (40326400)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | トゥヴァー人 / シベリア先住民族 / シベリア多文化 / シベリア多宗教 |
研究実績の概要 |
本調査では、先住民族がすむシベリア各地を訪問し、かれらに直接にインタビューすることで貴重な証言を聴き取ることができた。シベリアの先住民族数は120ほどをかぞえるといわれており、とりわけ従来ほとんど知られることがなかった先住民族と面会することに成功した。 画期的な成果の一つとして、シベリア南部のトゥヴァー共和国を訪問したことである。日本人が踏みいれることがほとんどない地域を訪れて、先住民族のトゥヴァー人多数と面会できた。トゥヴァー人は共和国の総人口の80パーセントを占めており、ロシア国内に居住しながら、仏教を信仰している。トゥヴァー共和国はモンゴルと国境を接しており、宗教的にも文化的にも、そして言語的にもモンゴルからの影響をつよく受けている。 ロシア国内ではロシア愛国主義が高揚しているが、トゥヴァー共和国ではロシア愛国主義とは無縁であり、むしろアジアへの一体感が滲んでいる。共和国の首都クズィール市の中央部には「アジアの中心」を掲げる記念碑が設置されており、トゥヴァー人が訪れる観光名所となっている。プーチン政権はアジアとの経済交流の拡大をはかっており、モンゴルや中国との外交関係を発展させる政策のなかで、トゥヴァー人の役割が大きくなっている。 研究のもうひとつの成果は、シベリア東部のチター市を訪問し、多種の先住民族が多文化社会を構成している実態を解明できたことである。市内にはシベリアの先住民族が100ほどが共存しているといわれており、市内には伝統的なシャマニーズムをはじめとして仏教、イスラム教、ロシア正教会、ユダヤ教の宗教施設が狭い範囲内で共存している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、おおむね順調に研究活動を展開している。シベリアは地域により文化、宗教、言語が異なる。こうした状況のなかで、シベリア極北のネネツ人の調査から開始し、ロシア人のシベリア進出となった西シベリアの先住民族のタタール人にも調査を行った。さらにシベリア南部のトゥヴァー人、シベリア東部のチター市内にすむ多種の先住民族にも調査をひろげることができた。これらの諸民族を調査することで、当初の研究目的であるシベリア地域主義の潮流をとらえることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、本研究の最終年度になる。シベリア中央部に位置するサハー共和国を中心に調査を計画している。この共和国にはサハー人(ヤクート人)が多数すんでおり、ダイヤモンドや金の世界的な産地である。天然資源の取得権をかかげて独自性をつよめるサハー共和国を訪問し、サハー人の地域主義を解明する。
|