研究課題/領域番号 |
25301022
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆広 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (60320272)
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研究分担者 |
石上 悦朗 福岡大学, 商学部, 教授 (00151358)
絵所 秀紀 法政大学, 経済学部, 教授 (10061243)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インド / 産業発展 / 日系企業 |
研究実績の概要 |
2015年度は、本研究課題に関わる重要な研究業績を2点挙げることができた。(1)1点目は、Canadian Journal of Development Studiesに掲載されたKato and Sato(2015)である。この論文は、インドでは腐敗(汚職)が政府規制に晒されている製造業のパフォーマンスを改善させる効果を持つことを明らかにした(腐敗の潤滑油効果)。しかし、この論文は、いったん規制緩和がなされれば、そのような効果は消滅し悪影響の方が大きいことも同時に明らかにしている。(2)Journal of Policy Modelingに掲載されたFujimori and Sato(2015)は、インドへの外国直接投資がその後方連関効果を通じて製造業の総要素生産性(TFP)を高めることを明らかにした。こうした産業連関効果を通じて、直接投資がインド製造業のパフォーマンスを高めることを定量的に厳密に明らかにしたのはおそらくこの論文が初めてである。 上記の研究に加えて、代表者による``India's Macroeconomic Performance in the Long Run''がRoutledge New Horizons in South Asian Studiesの一巻のなかに収録されたことも特記しておきたい。この論文は、インドの産業発展を考えるうえで前提条件となるインドのマクロ経済史をコンパクトにまとめたものである。 研究協力者、連携研究者や分担研究者による個別産業調査に加えて、2015年8月~9月にかけて、安保哲夫東京大学名誉教授の指導のもと、インド進出日系企業の15工場の日本的生産経営システムの移植状況を調査する「ハイブリット調査」を実施できたのは、本研究課題の方法論上画期となるものであった。15工場の会社記録を作成し、一部工場のハイブリッド評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)2015年度の最大の成果は、Canadian Journal of Development StudiesとJournal of Policy Modelingに本研究課題に関わる論文を2本掲載することに成功したことである。 (2)これまで連携研究者と分担研究者による個別産業調査を行ってきたが、2015年度には、安保哲夫東京大学名誉教授の指導のもと、世界的に高く評価されてきた海外進出日系企業の「ハイブリット調査」(海外にどれだけ日本的生産経営システムが適用され、それがどの程度海外の現実に適応さているのかを評価する)をインドで本格的に実施することができた。このことを特記したい。調査対象になった工場はインドのみならず日本をも代表する日系製造メーカーである。15工場分の会社記録を作成し、そのハイブリッドの状況の評価を一部工場について行うことができた。この「ハイブリット調査」の実施によって、インド工場のケーススタディを超えて、世界のなかの進出日系企業のなかで、インド進出日系企業の特徴を明らかにすることができることが予想される。これは、当初、予想もしなかった研究上の進展であった。 (3)RIEBディスカッションペーパーとして、本研究課題の方向性を示すような「インド産業発展の軌跡と展望」を執筆し公開した。また、代表者は、脱稿してはいないが、このほかに「インド自動車部品産業の対外経済活動と生産性」やインド進出日系企業調査をベースにした研究論文執筆に注力することができた。また、西山博幸兵庫県立大学教授と藤森梓大阪成蹊大学講師との共同研究で、インド進出日系企業の生産性と立地戦略の関係に関する理論的・実証的研究を行い、暫定的な研究結果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)2016年度中に、再度、「ハイブリッド調査」を実施する。2015年度はデリー首都圏とバンガロールに立地する工場を調査したが、2016年度は他地域に立地する工場を調査する。とくに、デリー=ムンバイとチェンナイ=バンガロール産業大動脈が本研究の重点研究領域なので、ムンバイ近郊のプーナとチェンナイが調査の有力候補地である。 (2)本研究課題は2016年度が最終年度であるが、年度中に本研究課題の中間総括として、佐藤隆広編『インドの産業発展と日系企業』を出版する(神戸大学経済経営研究所叢書第77号予定)。そのために、研究協力者、連携研究者や分担研究者に関連論文を寄稿してもらう。 (3)引き続き、インド「年次工業調査」と地理情報システム(GIS)データの整理などを行う。 (4)代表者は、機会があれば、積極的に本研究課題に関わる研究報告を内外の学会で行う。
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