研究課題/領域番号 |
25301035
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松井 剛 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (70323912)
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研究分担者 |
鷲田 祐一 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (80521286)
山下 裕子 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (90230432)
上原 渉 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (30515060)
鈴木 智子 京都大学, 経営学研究科, 講師 (20621759)
大竹 光寿 明治学院大学, 経済学部, 講師 (40635356)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | クリエイティブ産業 / 国際マーケティング / 異文化ゲートキーパー / 商学 / コンテンツ / クールジャパン |
研究概要 |
平成25年度に実施した調査研究は、【現地調査】と【消費者調査データ分析】の2つである。【現地調査】平成25年9月にインド、平成25年11月にフランス・パリで、現地調査を行った。インドでは、日本のアニメ『巨人の星』の現地版がどのように制作・放映され、またどのように受け入れられているのか、ということを知るために、制作会社、スポンサー企業、メディア専門家に対して聞き取りを行った。またパリでは、日本産マンガと日本食のフランスにおける受容を調査するために、現地出版社やレストラン経営者などへの聞き取りを行った。【消費者調査データ分析】体系的な国際消費者調査データベースである博報堂Global Habitを用いて、ASEAN諸国主要都市における日本産コンテンツ(アニメ・音楽・映画など)の受容についての分析を行った。これら2種類の調査研究を通じて、本国で創られたクリエイティブ製品を現地市場に適合させる越境ゲートキーパー(Cross-Border Gatekeeper)と呼ぶべき主体が、文化や制度など様々なギャップを克服していることが明らかになった。 こうした成果は、【各種研究会】と【国際学会】で発表された。【各種研究会】日本マーケティング学会のクリエイティブ産業とイノベーション研究会(3回開催)と組織学会企画・定例会において、研究成果を学会員と共有した。また、一橋大学秋季公開講座でも研究成果を一般に公開した。【国際学会】平成26年3月に、International Conference of Asian Marketing Associations(韓国ソウル)おいて、査読を経た論文1本を発表した。本論文は、現在、国際学術誌に投稿中である。また、平成26年7月に開催予定の Global Marketing Conference(シンガポール)では、2本の論文が採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述のように、現地調査と消費者調査データ分析の2つを行った。 インドの現地調査については、現地版『巨人の星』のアニメーションを実際に制作する企業に聞き取りを行うことで、表現上の留意点やターゲット視聴者についての詳細な情報を得た。また現地メディアの専門家から、同アニメについて第三者的な視点に立って評価をしてもらった。これまで日本側の制作者(輸出側)とも密接に情報交換していたが、今回の現地調査を通じて浮かび上がったことは、海外のクリエイティブ製品を受容する側(輸入側)が直面する文化や制度のギャップがゆえの摩擦である。 フランス・パリでの現地調査については、まず日本産マンガの出版社への聞き取りを行った。研究代表者が平成24年度に実施した調査(若手研究(B)、研究課題番号22730332)でアプローチできなかった出版社に対して重点的に聞き取りを行った。過去の調査をあわせて、フランス市場にある主要な日本産マンガ出版社をほぼすすべて網羅した。また日本食の受容についても、日本食レストラン経営者、食評論家などに聞き取り調査を行った。鮨文化の普及に貢献したのが、実は日本人(輸出側)ではなく現地の中国人(輸入側)であることなど、興味深い発見事実を得た。 消費者調査データ分析については、データベース博報堂Global Habitを利用した初めての学術研究を行った。ASEAN主要都市で統一的に行われた消費者調査のデータは非常に貴重である。体系的なデータであるため、日本のみならず(韓国など)他国のクリエイティブ製品のASEAN諸国での受容と比較することができる。発見事実としては、例えば、アニメやマンガよりも映画や音楽の方が、その国が輸出する他の製品(工業製品など)の輸入国でのイメージ向上に貢献する、ということが明らかになった。これは実務的な直感に合うものだが、データでの裏付けがほとんどされてこなかった発見事実である。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成25年度のインドおよびフランスでの調査の結果を、平成26年7月にシンガポールで開催予定のGlobal Marketing Conferenceにて2件発表する(採択済み)。 2.この出張にあわせて、シンガポールでの現地調査を行う。例えば、シンガポールに進出した鮨かねさかについて、主人金坂真次氏、また現地店料理長押野亘一郎氏に取材し、現地店舗観察、現地消費者インタビューなどを通じて、鮨がどのように現地文化に適合されつつも鮨のアイデンティティを残しているかを調査する。加えて、シンガポールで(株)アパレルウェブ社が推進している日本中小ファッションブランドのアンテナショップ展開について、出店企業取材、現地店舗観察、現地消費者インタビューを実施する。こうした調査を通じて、日本の「リアルクロ ーズ」がASEANでどのように支持されるのかについての一次情報を得る。 3.本研究プロジェクトの主要メンバーが運営する日本マーケティング学会のクリエイティブ産業とイノベーション研究会にて、研究成果の発表を行い、フィードバックを頂き、今後の研究の参考とする。 4.現在、進行しつつあるクリエイティブ産業の海外展開の具体例を収集し、平成26年度から平成28年度の3年間で調査するに値するものを選定する。その際には、経済産業省クリエイティブ産業課、クールジャパン機構などに対する取材を行う。選定した事例について、日本よおび現地での調査に着手する。そのために海外出張を行う。 5.以上の事例研究を補完するかたちで、データベース博報堂Global Habitを利用して、クリエイティブ製品のASEAN諸国における受容に関するデータ分析を引き続き行う。
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