研究課題/領域番号 |
25301035
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松井 剛 一橋大学, 商学研究科, 教授 (70323912)
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研究分担者 |
鷲田 祐一 一橋大学, 商学研究科, 教授 (80521286)
鈴木 智子 京都大学, 経営学研究科, 講師 (20621759)
上原 渉 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (30515060)
大竹 光寿 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (40635356)
山下 裕子 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (90230432)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | クリエイティブ産業 / 国際マーケティング / 異文化ゲートキーパー / クールジャパン |
研究実績の概要 |
研究実績は、(1)調査と(2)成果発表の2つに分けられる。 (1)調査:調査については、国際学会発表の出張の機会を利用して、シンガポールにて、日本のクリエイティブ産業の国際展開について、詳細なフィールド調査を実施した。食、アパレル、音楽、アニメ、出版、書籍販売、メディアなどの分野で異文化ゲートキーパーとしての役割を果たしている企業など話を伺った。日本産のコンテンツや食などを現地化しつつもオリジナルの魅力を維持するための努力について、さまざまな知見があった。 (2)成果発表:成果発表については、これまで行った調査やデータ分析に基づいて、数多くの学会発表を行い、論文・書籍を出版した。国際学会で3件、発表した。現地調査に基づくものが1本(Matsui, Suzuki, and Washida (2014))、国際消費者調査データベース(博報堂Global Habit)と現地調査の結果を組み合わせた論文を2本(Matsui, Uehara, and Washida 2014; Uehara, Washida, and Matsui 2014)を発表した。うちUehara, Washida, and Matsui (2014)は、2014 Global Marketing Conference at SingaporeにおいてTaylor and Francis Best Conference Paper Award を受賞した。また、鷲田(研究分担者)が『デザインがイノベーションを伝える:デザインの力を活かす新しい経営戦略の模索』において、デザインの海外輸出についての実証的な議論を展開した(2014年オフィス関連書籍奨学金審査優秀賞を受賞)。松井(研究代表者)と鈴木(研究分担者)は、大部の『ソロモン消費者行動論』を翻訳し、グローバルな消費者行動を分析する本格的な枠組みを提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、2014 Global Marketing Conference at SingaporeにおいてUehara, Washida, and Matsui (2014)がTaylor and Francis Best Conference Paper Award を受賞した。これはアジア諸国における日本と韓国のクリエイティブ産業の国際展開が、この2カ国が輸出するハード製品(例えば家電製品)の輸出に対してポジティブな影響をもたらしているのかを検証した論文である。国際的な消費者調査のデータベースを用いて、クリエイティブ産業の海外展開がもたらすインパクトについて分析した論文は、あまりないのが現状である。しかし、多くの国にとって、クリエイティブ産物の輸出や輸入は大きな問題であり、その波及効果についての関心が高い。こうした理由から、我々の論文が高い評価を得たと考えられる。プロジェクト2年目である平成26年度に、このような国際的な評価を得て、様々なフィードバックを頂いたことは、今後の研究プロジェクト推進に大きく貢献する。 また、シンガポールでの調査は、ベストペーパーを受賞したカンファランスに併せて行われたものである。7日間の滞在で、15件を超えるインタビューを実施した。また合間には、各種日本食レストランでフィールドワークを行うなど、非常に過密なスケジュールの中、多くの調査が実施できた。平成25年度に実施したインドとフランスでの調査と併せて、海外で異文化ゲートキーパーが果たしている役割をより具体的なイメージをもって理解することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
(1)海外現地調査、(2)ゲートキーパーに関する質問票調査、(3)発見事実の分析、(4)成果の発表の4つである。 (1)海外現地調査:平成25年度、平成26年度に引き続き、クリエイティブ産業の海外展開についての現地調査を実施する。平成25年度はインドおよびフランス、平成26年度はシンガポールでの現地調査を実施し、多数の聞き取り調査を行ってきた。平成27年度は、アメリカ(先進国)もしくはインドネシア(新興国)の食、伝統工芸品、キャラクター、ファッション、ボーカロイドなどの現地展開についての調査を行う。 (2)ゲートキーパーに関する質問票調査:これまでの聞き取り調査を通じて、異文化ゲートキーパーの特性やその成果についての知識を蓄積してきた。これに基づいて、異文化ゲートキーパーに対する定量的な質問票調査を実施する。質問票調査の設計は時間をかけて慎重に準備する必要があるため、平成27年度内に研究会を開催し、調査票の内容を詰める予定である。調査の実施は、平成27年度末の予定である。平成28年度からデータの分析を行う予定である。 (3)発見事実の分析:現地調査から得られた発見事実について、チームメンバーの協業を通じて分析する。アシスタントや定性データの分析ソフトウェアを活用して、効率的効果的な分析を実施する。 (4)成果の発表:聞き取り調査から得られた発見事実の分析を、国内外の学会にて発表する。例えば、10月30日から11月1日に開催予定の2015 International Conference of Asian Marketing Associations(早稲田大学)での学会発表を想定している。また『Journal of International Business Studies』などの査読誌への準備を進める。また、研究代表者(松井剛)が、本プロジェクト以前から長年行ってきた北米市場における日本産マンガ産業についての研究書を有斐閣から出版する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、「今後の研究の推進方策」で説明した通り、平成27年度において、異文化ゲートキーパーに対して質問票調査を行うためである。これは、国際的な調査となるため、リサーチ会社への支払い費用が高額になるため平成27年度の予算だけではまかなえない可能性がある。こうした判断から、平成26年度の予算を平成27年度に回すことを決めた。
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次年度使用額の使用計画 |
上述のように、異文化ゲートキーパーに対して質問票調査の実施のために、リサーチ会社への費用支払いに使用する計画である。該当するサンプル、すなわち異文化ゲートキーパーは、そもそも数が多くないため、リサーチ会社のパネルから抽出する際に費用が発生する。また、質問票のウェブ化、回答の依頼、非回答者への督促、データのクリーニングなどの費用が発生する。
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