研究課題/領域番号 |
25301035
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松井 剛 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (70323912)
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研究分担者 |
鈴木 智子 京都大学, 大学院経営学研究科, 准教授 (20621759)
上原 渉 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (30515060)
大竹 光寿 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (40635356)
鷲田 祐一 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (80521286)
山下 裕子 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (90230432)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クリエイティブ産業 / 国際マーケティング / 異文化ゲートキーパー / クールジャパン |
研究実績の概要 |
平成28年度の主な活動は、タイ・バンコクにおける日本食市場についての4回の調査である。なぜ日本食がバンコクの消費者において定着したのかを、定性的・解釈的に調査することを目指した。この調査で用いられた方法論は、研究代表者が翻訳出版した『消費者理解のための定性的マーケティング・リサーチ』に基づいたものである。本書は、定性調査に関する世界標準のテキストブックである。また、これらの調査の準備や調査結果についての議論を行うために、研究会を随時、開催した。 第1回調査(8月)では、日本食を食べる習慣があるタイ人消費者10名に対する深層インタビューを実施した。日本らしさを感じる写真を持参してもらい、それに基づき日本や日本食についてのイメージについてZMET(Zaltman Metaphor Elicitation Technique)という手法を用いて語ってもらった。また8月から9月にかけて食日記(毎食、写真を撮ってもらい、感想などを記入するもの)を付けてもらった。 第2回調査(9月)では、第1回調査の消費者に、3つの代表的な日本食レストラン(Fuji、Oishi、大戸屋)に集まってもらい、実際に日本食を食べてもらいながら、日本食の消費についての深層インタビューを行った。 第3回調査(1月)では、日本食レストランチェーンのOishi創業者と同Zenの社長にヒアリングを行った。 第4回調査(3月)では、第1回、2回調査に参加してもらった消費者の家庭を訪問して、台所などを観察して、彼らの日常の食生活について深層インタビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来、平成28年度は、最終年度であった。しかし、平成28年10月にタイ国王が逝去し、タイ社会全体が喪に服したため、調査を予定通り行うことが困難になった。そのため同年12月に実施予定だった調査を延期せざるを得なくなった。こうした事情から、本科研費プロジェクトを1年間延長することを決めた。 しかし結果的には、バンコクの日本食市場に関する調査を4回行うことが出来たため、「土地勘」がない市場について深い理解を得ることができた。 またリッチなデータが得られたため、これを活用して国際査読誌への投稿論文の準備も始まっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成29年度は、(1)タイ日本食市場についての追加調査と(2)成果発表の2つが焦点となる。 (1)タイ日本食市場についての追加調査:これまで行ってきた消費者調査と企業ヒヤリングを補完するための追加調査を行う。現在、以下(2)(a)の成果発表のために文献サーベイなどを行い、理論的な議論を進め、論文化にあたってデータとして何が足りないのかを洗い出す作業を行っている。この作業を踏まえた最終的な追加調査を実施する。 (2)成果発表:以下の3つに関して投稿・出版を行う。 (a) 『Journal of Product and Brand Management』が「Beyond Country and Brand "Origin"」という特集号への投稿論文を募集している。平成29年10月31日の〆切までに、日本発の日本食レストランチェーン(例えば大戸屋)とタイ発の同チェーン(例えばOishiやZen)の違いや魅力についてタイ人消費者からどのように見えているのかという具体的な問題について、ブランド・オリジンという理論的観点から検討する論文を投稿する予定である。 (b)8番ラーメンのタイ進出に関する企業ケースを『一橋ビジネスレビュー』に投稿する予定である。 (c)日本産マンガのアメリカ市場進出についての研究書『アメリカに日本のマンガを輸出する:ポップカルチャーのグローバル・マーケティング』を有斐閣から出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の活動の焦点は、タイ・バンコクにおける日本食市場の調査であった。しかし10月にタイ国王が逝去し、タイ社会全体が喪に服すこととなり、諸活動が停滞する事態となった。そのため調査対象の選定やマネジメントなどを依頼していた調査会社とのコミュニケーションが難しくなるなどの問題を生じたため、12月調査を延期することを決めた。こうした調査の遅れから、平成29年度に使用額が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、『Journal of Product and Brand Management』の特集号「Beyond Country and Brand "Origin"」に論文を投稿する予定である。現在、文献サーベイなどを行い、理論的な議論を進め、論文化にあたってデータとして何が足りないのかを洗い出す作業を行っている。この作業を踏まえた最終的な追加調査を実施する。
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