研究課題
本科研のまとめとして、櫻井編『中国の宗教変動 アジアのキリスト教』北海道大学出版会を3月に刊行した。全20章、A4判、453頁の大部の書籍である。現代の中国における宗教変動と、アジア各国の宗教の動き、特にキリスト教の躍動を描き出す。東アジアの近現代においては政治が宗教を統制してきたが、近年では社会内部のダイナミックな宗教運動とトランスナショナルな宗教がもたらすインパクトによって、政治的統制や文化的圧力の網の目をくぐり抜けて宗教的空間が存在することが確認される。これらの宗教の制度分析を軸に、階層分化や社会的排除などポスト・グローバル時代の社会問題に宗教はどのように応えるのかという問題意識をもって、東アジアの宗教動態を変動の局面で把握する著作である。本書の特徴は、中国の現代宗教、アジアのキリスト教の動態といった調査研究に加えて、宗教文化や教団宗教のあり方を規定する宗教政策と、宗教の社会的機能に関わる当該国の社会保障や福祉レジームとの関連をマクロ的な視点で捉えた上で、個別のフィールドや対象に迫っていくという社会学的なアプローチを取ろうとしているところにある。この発想自体は、2年前の櫻井義秀・外川昌彦・矢野秀武編、2015、『アジアの社会参加仏教-政教関係の視座から』北海道大学出版会、で意識したものである。ただし、本書全体でこのアプローチは緩い大枠に相当するもので、個別論文はそれぞれの視点や方法論で書かれている。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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