研究課題/領域番号 |
25301039
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
吉原 直樹 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (40240345)
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研究分担者 |
長谷部 弘 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50164835)
今野 裕昭 専修大学, 人間科学部, 教授 (80133916)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海外日本人社会 / ライフスタイル移民 / グローバル・ディアスポラ / セカンド・リタイア層 / バリ社会 |
研究実績の概要 |
平成28年度を含めて、これまでの研究で明らかになったことは、以下の通りである。 1.バリの日本人社会は、移民第1世代、第2世代、第3世代の間に明確な違い(ディバイド)が生じている。総じて第1世代はインドネシアに同化している。それにたいして、若い世代ほど、フットワークの軽い「ライフスタイル移民」が多数を占めている。 2.また若い世代ほど、コーエンのいうような「グローバル・ディアスポラ」が多くなっている。かれら/かの女らにとって、国境の壁は低く、アイデンティティも複層化している。またインドネシアの同化圧力からも相対的に自由である。 3.とはいえ、日本人社会から脱落化/周辺化する人たちが、特にセカンド・リタイアメント層の間から立ちあらわれている。かれら/かの女らは、日本政府からは「自己責任」の論理で、またインドネシア政府からは「福祉対象者」として忌避される傾向にある。 4.全体としてみれば、日本人社会は脱統合化と再中心化を繰り返すなかで流動社会の性格を帯びている。また多様なアイデンティティが重層している。それとともに、日本人移民にとって、日本人会はone of themの存在でしかなくなっている。日本人会の外でさまざまな集団/組織に分属している。 なお、これまでジャカルタ日本人会(Japan Club)およびジョグジャカルタ日本人会での資料サーヴェイは現地研究者の協力を得て遂行されてきたが、バリの日本人会との比較をおこなうには、なお資料上の制約(次元の違うものが混在)があるため、引き続き現地協力者にお願いしてあらたな資料のサーヴェイをおこなっている。その上で上記のfindingsについての経験的一般化の妥当性を検証することにしているが、いまのところ、そうした妥当性はおおむね追認されるものと想到される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カウンターパートナーとの調整がうまくいっていないことが、全体の調査研究の進捗を部分的に妨げている。しかし当初計画は概ね実施されており、メインとなるフィールドワークおよび資料サーヴェイは、一部を除き順調にすすみ、「15.科研費を使用して開催した国際研究集会」にみられるように、中間成果の発表もすでになされ、一定の評価を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査のやり残したものをカウンターパートナーとの再協議の上、早急に実施するとともに、中間成果報告書『海外日本人社会とメディア・ネットワーク』で課題となった点をあきらかにするための補充調査も実施する。そして成果の最終集約をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた現地調査がカウンターパートナーの事情により先延ばしになったため、使用額の一部を次年度に繰り越さざるを得なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
カウンターパートナーとの周到な協議の上すみやかに調査実施計画をうちたてる。そして現地調査のための費用に充当する。
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