最終年度として国内外の学会や国内の国際講演会等および論文・出版物の刊行を通じて、本プロジェクトの研究成果の発表に取り組んだ。ヨーロッパ社会学会(8月・プラハ・高橋)での成果報告のほか、国内にひろく研究成果を還元するために、連携研究者と研究協力者の原稿を編集し、『離別後の親子関係を問い直す:子どもの福祉と家事実務の架け橋をめざして』(全206頁)を法律文化社から刊行した。本書は、国内の課題考察とともに、海外共同研究者リサ・ヤング博士によるオーストラリアの家族法制の変遷と最新の動向についての特別寄稿を含み、本研究の集大成ともいえる出版物である。 家族・親子関係の葛藤や支配といった課題に関して、ランディ・バンクロフト & ジャク・パトリッシの共著"Should I Stay or Should I Go?"の日本語版を『別れる?それともやり直す?カップル関係に悩む助成のためのガイド:うまくいかない関係に潜む"支配の罠"を見抜く』(全449頁)を明石書店から刊行した。離別後の親子関係に大きな問題が生じるとすれば、問題の萌芽はその家族関係のなかにあるという見地から、予防的な知見を提供することにこの訳書発刊の主要な意義がある。 2016年1月と3月には海外共同研究者を招聘しての国際講演会・シンポジウムを実施した。フィンランドからは国立ユヴァスキュラ大学家族研究センター研究員マリアンネ・ノトコ博士を招聘し、1月下旬に松江、岡山と神戸で家族研究およびDV問題の子どもへの影響についての講演会を実施した。3月上・中旬にはイギリス・セントラルランカシャー大学ソーシャルワーク研究科のニッキー・スタンレー教授を招聘し、性虐待をも視座に含めての家族間暴力と子どもの安全を主なテーマとする講演会・シンポジウムを岡山、名古屋、金沢で実施し、3年間の本研究の総括とした。
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