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2015 年度 実績報告書

学士課程教育の質的転換を実質化するためのガバナンスシステム

研究課題

研究課題/領域番号 25301046
研究機関広島大学

研究代表者

秦 由美子  広島大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (30263031)

研究分担者 アスピノール R・ウイリアム  滋賀大学, 経済学部, 教授 (10346009)
岡田 昭人  東京外国語大学, 総合国際学研究院, 教授 (60313277)
村澤 昌崇  広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (00284224)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードガバナンスシステム / 学士課程教育 / 質的転換 / アンケート調査 / イギリス
研究実績の概要

今年度は、研究実績の成果として『「学士課程教育の質的転換を実質化するためのガバナンスシステム」中間報告書』を作成した。本研究では、とりわけそのシステム及び環境を大きく左右すると考えられるガバナンスを分析の視角とし、これをタテに展開して、マクロレベル(高等教育政策・改革動向)、ミドルレベル(大学の運営機構・機能とその実際)、ミクロレベル(学生教育の最前線にある教員の意識と行動)の三層に区分して分析する試みである。いずれのレベルも、それを対象とする研究の一定の蓄積が見られる。しかし、三層を総合的に捉える研究は未だなく、各レベル間に生じるガバナンスの認識の齟齬が十分に埋められてはいない。これら三層の連関を含めた高等教育システム全体のガバナンスに対する認識を確立することが柔軟かつ自在な大学教学改革を実現するためには不可欠と考えられるのである。
研究成果としては、マクロレベル(政策)で規定される「学士力」、ミドルレベル(個々の大学)で設定されている「学士力」、ミクロレベル(最前線の大学教員)で個人の理念として考えられている「学士力」の三層間の一致点と乖離点に作用する三層間の相互作用の実態を解明することを掲げたい。これら三層間の相対的相互作用の結果として、教学ガバナンスのどのような要素が最終の「学習成果」たる「学士力」を左右するかを、本報告書では特徴的大学を訪問調査することで明らかにした。つまり本中間報告書では、学士課程教育の改善に寄与するガバナンスのあり方とはどのようなものかを、教学ガバナンスを促進または阻害する共通要因や普遍的条件、あるいは固有の要因や条件を、特徴的大学を選別した後、訪問調査を実施し、そこでの訪問調査結果を分析する中で、それぞれの大学における特徴的な教学ガバナンスのあり方及び大学運営組織・教員・学生三者間のあり方を見極めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

先行研究の整理をふまえた仮説にもとづき、「大学における教学ガバナンスとその効果に関する調査研究」と題したアンケート調査を行った。実査は平成27年1月~5月、全国の大学の学部長2216名を対象に行い、回収数は1044、回収率は47.1%であった。この数値はかつてないほど高い数値である。
回答・未回答の大学の基本統計量は以下の通りである。規模(定員)および設置年については回答・未回答大学に差は見られない(標準偏差も大差は無い)。偏差値(大学レベル)には統計上の差は有意であるが、その差は1.37(回答:54.1、未回答52.7)であり、標準偏差も大差ない(5.52、5.76)ことを踏まえると、実質科学的には両者の差は無いと判断できよう。ただし、設置者別の分布では、回答学部には国立が多く、私立が少ない傾向にある。つまり、規模・歴史・威信については日本の大学を代表しうるサンプルではあるが、設置者については国立がわずかに過大、私立が過小となっている点に留意すべきである。
結論としては、「リーダーとしての資質」と「構成員間協調関係」は教育成果の向上に寄与するものであった。そして、学長が強い決定力をもつほど「リーダーとしての資質」が高まり、教授会が強い決定力をもつほど「構成員間協調関係」が高まる傾向にあった。このことから、学長と教授会のどちらか一方が決定力を専有するよりも、両者で共有することが合理的であると考えられる。
アンケート調査結果は非常に多くの有益な情報を我々に導くもので、更なる分析・解析が可能となっている。また、その成果は、本年度2016年6月25日、26日に開催される日本高等教育学会にて発表する。

今後の研究の推進方策

地道な意見交換と議論を経て、「グローバル化推進への対応」や「教養教育改革」などの具体的な学士課程改革の事例から、その際に機能したガバナンスをたどるという路線が決まり、各メンバーがそれぞれに足で稼いだ事例が集まった。対象となった大学も、国立から私立まで、大規模から小規模まで、都市部から地方まで、日本だけではなく中国の事例も含めて、幅広く集まった。各大学の属性に加えて、当該大学の組織風土、人的資源(客観的にモノサシに当てやすい資質から客観化しにくい資質までを含めて、さらにはリーダーとフォロワーの両面にわたっての属人的要素も大きい)、財源などもガバナンスの成否を左右する内的要因になり得るし、時の政策やタイミングといった外的要因によっても、左右され得るだろう。
今後は、中間報告書の発展形として、アンケート調査結果も含む、最終報告書の作成に進む予定である。また、共同研究者による論文発表、講演、学会発表を進める。次に公刊予定である最終報告書では、昨年度から今年度6月にかけて実施しているアンケート調査結果をもとに、外形的に参照できる成果指標と照合しながら、三層間の相互作用の実態を解析する予定である(アンケート調査票は、本報告書末尾に収めている)。

次年度使用額が生じた理由

アンケート調査とデータ入力の為の費用が不足していたため、「前倒し」費用でそれら費用を補填したが、わずかだが残額が出たため、H28年度に活用するために次年度使用額にまわす結果となった。

次年度使用額の使用計画

アンケート調査費用の中の、特に、日本の全大学のデータ入力費用に使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] オックスフォード大学/サセックス大学/Higher Education Academy(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      オックスフォード大学/サセックス大学/Higher Education Academy
    • 他の機関数
      1
  • [国際共同研究] トウェンテ大学(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      トウェンテ大学
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      1
  • [雑誌論文] 学士課程教育の質的転換を実質化するためのガバナンスシステム2015

    • 著者名/発表者名
      秦由美子、大佐古紀雄、村澤昌崇、大膳司、黄福當、大場淳、ロバート・アスピノール、佐々木亮、飯田直正、篠宮圭司、岡田昭人
    • 雑誌名

      科学研究費補助金(基盤研究(B))研究成果中間報告書

      巻: 1 ページ: 1-113

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] 日本の高等教育におけるガバナンス・組織文化・成果の関係に関する調査研究 全国学部長アンケート調査に依拠して2016

    • 著者名/発表者名
      秦由美子、村澤昌崇、大膳司、黄福當、大場淳、ロバート・アスピノール、大佐古紀雄、岡田昭人
    • 学会等名
      日本高等教育学会
    • 発表場所
      追手門学院大学
    • 年月日
      2016-06-25 – 2016-06-26
  • [学会・シンポジウム開催] 教職協同:日本とイギリス2015

    • 発表場所
      広島大学・学士会館
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-11

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公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-31  

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