研究課題/領域番号 |
25301054
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
鳥越 隆士 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (10183881)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 聴覚障害児教育 / コ・エンロールメント / インクルージョン / 手話 / 国際情報交換 / 米国:香港:デンマーク:ニュージーランド |
研究実績の概要 |
本研究は,インクルーシブな学習環境にある聴覚障害児童のためのコ・エンロールメント教育プログラム(通常の学級で聴児と聴覚障害児が共に学び,手話と音声言語の活用に配慮したチームティーチングによる指導)の開発に関する海外調査を行うものである。具体的には,欧米等で実施されている先進的な事例を現地調査し,教師の指導法,教室における聴児と聴覚障害児との関わり,教室における手話言語と音声言語との関わりを具体的に記述,分析する。本年度は,昨年度に明らかにされた2つのタイプ,手話通訳優位なプログラムとコ・ティーチング優位なプログラムを比較し,それらの具体的な実践の異同,優れた点や困難な点を整理し,これに関連する要因について分析した。その結果,指導の直接性と媒介性(通訳を介するか直接指導を重視するか),言語の質(特に,手話言語の質が直接性により低下する),教室の情報の流れ(単線的であれば,通訳は機能するが,複線的だと通訳が機能しない),オーバーヒアリング(偶発的学習)の問題(直接聴覚障害児に語られる情報以外の情報が抜け落ちる)等の要因が明らかになった。また単に言語の問題だけでなく,ろう者自身の実践への関与が重要な要因であることも明らかになった。香港のプログラムでは,コ・ティーチング優位型であるが,その1人は常にろう教師であり,また米国のプログラムでは,手話通訳優位型であるが,教員の中にフルタイムのろう者教員1名が関わっていた。これらのプログラムで,具体的にろう者教員がどのように子どもたちや聴者教員に関わっているのか,聴覚障害児の学びにどのように関与し,また聴覚障害児のクラスへの参加を促進しているのか等を検討した。さらに本年度は,広くインクルーシブ教育の中でのコ・エンロールメント実践の位置づけを明らかにするため,デンマークおよびニュージーランドでの類似モデルの現地調査も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度の調査により明らかになった,コ・エンロールメントプログラムの2つのタイプ,コ・ティーチングモデルと手話通訳モデルの異同について,より詳細に比較・検討することができ,重要ないくつかの要因を析出することができた。また新たにろう者の関与(社会・文化的視点)という要因が重要であることも明らかになった。以上より,本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,引き続き,香港およびイタリアでのCo-enrollmentの現地調査を進め,授業のビデオ分析を含めた,より詳細な分析と担当教員のインタビューを実施することにより,これまで提案された仮説の検証を深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
香港で収集した映像資料の翻訳を現地で依頼し,謝金として執行する予定であったが,訪問の日程調整がつかず,依頼ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度,香港の現地調査を行うが,その際,資料の翻訳を依頼する。
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