研究課題
・2014年7月に,ロスバニョス(フィリピン)の観測システムの一部が台風のため壊れたが,2014年9月に復旧作業を行い,観測を再開することができた。2014年12月に,台南(台湾)の台南市立青草小学校に設置してあった観測システムを台南市立土城高校に移設した。青草小学校での新棟建設のため,観測システムを設置してあった建物を取り壊すためである。2015年3月に,ポンティアナ(インドネシア)のインターネットの再設定を行い,日本から遠隔操作できるようにした。既設のタイおよびベトナムの観測点では自動定常観測し,データを蓄積している。・10 kHz以下の水平磁場2成分および標準電波の振幅・位相の観測データのデータベース化を行い,大学間連携データベースサイトIUGONETで公開を開始した。・従来のデータ記録ソフトウェアでは40kHz以下の水平磁場2成分および垂直電波1成分は1分間につき20秒のデータ取得が限界であったが、本年度は観測不能時間がない連続波形データ取得が可能なソフトウェア開発にも成功した。データ解析では、落雷位置の導出アルゴリズムを開発した。現在は同アルゴリズムを用いた落雷信号の自動検出システムを開発中であり、2015年度中に観測網へ適用する予定である。・LF帯標準電波観測については、本年度は台南局と陸別局の観測システムの更新、並びに解析ツールの整備を実施した。また、日本国内において は、冬季北陸雷に伴う下部電離圏の電離現象についての解析を進め、落雷のピーク電流値と電離の規模に正の相関があることを明らかにした。この 結果を更に詳細に調べるため、福岡県篠栗(九州大学)と福島県田村市(星の村天文台)にJJYの受信点を新設設置し、観測を開始した。・東南アジアとの海外共同研究を進めるため,2015年2月にデータ解析講習会を実施し,また動画配信による講義の教材の作製を行った。
2: おおむね順調に進展している
2014年12月に台湾の観測機器を移設することができたが,2014年7月に発生した台風により,フィリピンの観測システムが被害を受けた。2014年9月に観測自体は復旧することができたが,現在もインターネット回線は断線している。またベトナムもインターネットが接続できない状況で,平成27年度は全面復旧を予定している。観測データから,tweek空電, long recovery event, および雷起源の空電が観測されており,現在その自動解析プログラムの開発および解析を進めているところである。これまでの解析で,日本国内の現象であるが,地上の雷,エルブスおよびLong recovery eventが同時に観測されていたことが分かった。これは地上の雷から発生した電磁パルス(EMP)がエルブスを形成し,下部電離圏を強く電離して回復時間が長くなったことを示唆している。これらのことから,本研究計画はおおむね順調に進展している。
当初の予定どおり,平成27年度にはデータ解析に主眼を置き,雷放電に伴い発生するEMP等がD領域・下部E領域電離圏電子密度に及ぼす影響を実証的かつ定量的に明らかにする。東南アジア5観測地点での自動定常観測を維持・継続し,データの蓄積を図るとともに,得られたデータをデータベース化して,海外の関連研究者と共同研究を推進する。
科学研究費補助金はほぼ全額使用したが,学術研究助成基金助成金に次年度使用額が生じた。その理由は,台湾の観測システム移設の際の新規物品購入および輸送費を予定していたが,新規で購入したのは部品のみでほぼ既存の物品で使用可能であり,また現地協力機関である国立成功大学(台湾)が機器運搬を支援してくれたため,予定より少ない金額で済んだ。
翌年分として請求した研究費と合わせて,今年度は最終年度なので,3年間の観測・解析結果を論文にまとめる。その論文発行費,それに関連する英文校閲代がかかる。また研究成果を国外・国内学会で発表するため,その出張費が必要となる。また東南アジア5観測地点での観測データ回収・メンテナンスのための海外出張費が必要となる。台湾およびフィリピンの無停電電源装置(UPS)が寿命および台風による損壊のため現在停止中となっており,そのUPS購入費が必要となる。
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