研究課題/領域番号 |
25302007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 衛 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (20210560)
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研究分担者 |
齊藤 昭則 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10311739)
大塚 雄一 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40314025)
齋藤 享 国立研究開発法人電子航法研究所, 航法システム領域, 主幹研究員 (40392716)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 赤道スプレッドF現象 / 衛星ビーコン観測 / アジア太平洋 / 国際共同研究 |
研究実績の概要 |
赤道大気レーダー(Equatorial Atmosphere Radar; EAR)と東南アジア地域およびさらに広域の観測網を駆使して、電離圏に発生する最も強い不安定現象である赤道スプレッドF現象(Equatorial Spread-F; ESF)と電離圏構造の関連を解明し、ESF発生機構の謎を解くことを目的とする。平成27年度には以下の研究を実施した。 (1)EARを用いて2010年から実施してきた電離圏と大気圏の長期連続観測を継続実施した。1年間を通じて大きな問題はなく、ほぼ切れ目なくデータを取得できた。長期間の観測データから、真夜中過ぎの時間帯に発生するESF現象について、発生時の上昇速度の統計解析をおこなった(Dao et al., 2016)。またEARによって観測された、強いESFが日出時に発生する稀な現象についての解析から、惑星間磁場Bzの北向き反転がきっかけとなってESFが発生したことが分かった(Tulasi Ram et al., 2015)。(2)東南アジア域に展開している衛星=地上ビーコン観測網も引き続き維持された。タイからEARにかけての東経100度付近の南北観測網のデータ解析から、2012年3月について電離圏赤道異常が日出後に発達し夕刻から夜にかけて減衰する様子、磁気嵐に対する変動の様子と日々変動が明らかにされた(Watthanasangmechai et al., 2015)。さらに、GPS観測データとイオノゾンデから、ESFの強度が日没時の東向き電界のPre-reversal enhancementに関連することを明らかにした(Abadi et al., 2015)。(3)衛星=地上ビーコン受信機のさらに広域展開については、エチオピア・バヒルダール市に出張して機器メンテナンスとデータ回収を行った。また同地で開催された14th International Symposium on Equatorial Aeronomy (ISEA14)に出席して、研究成果の発表と議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究が当初より予定していた、EARによる長期連続観測の継続、衛星=地上ビーコン観測網の充実とデータ解析については、ほぼ当初の計画通りの進展を得ている。加えて、研究分担者および共同研究者らが共同でGPS観測網、大気光イメージャ、衛星観測等を活用した多様な研究を推進しており、多数の論文発表が行われている。これらは当初の計画を超えた達成であると評価できる。具体的には、2015年3月17日に発生した磁気嵐に伴って発生したESFについて、C/NOFS衛星、SWARM衛星(3機編隊)、磁気赤道沿いのイオノゾンデ、日本とオーストラリアに設置されたファブリペロー干渉計のデータを駆使して、ESFの発生がインド付近では顕著であったがタイ・ベトナム付近では弱いという経度依存性を発見した(Tulasi Ram et al., 2016)。さらに、海南島(中国)のVHFレーダーとEARによるESF発生頻度が異なることに注目し、それを下層大気の変動の強さの地域差から説明した(Li et al., 2016)。本課題はさらなる広がりを見せており、南米におけるGPS観測網等を用いたESFモニタシステムの開発に協力し(Takahashi et al, 2015)、タイのSuvarnabhumi国際空港付近におけるGPS観測からESFが航空航法に与える影響について共同研究している(Rungraengwajiake et al., 2015)。本課題全体として、論文発表数は8件(うち国際共著論文7件)、学会発表は招待講演6件を含む45件(うち国際学会15件)に達した。
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今後の研究の推進方策 |
赤道スプレッドF現象の日々変動特性の解析過程で、大気圏との相互作用を更に詳しく調べる必要が明らかとなったため、大気圏―電離圏結合モデルGAIAとEARおよび衛星=地上ビーコン観測データ等との比較研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
赤道スプレッドF現象の日々変動特性の解析過程で、大気圏との相互作用を更に詳しく調べる必要が明らかとなった。大気圏データとして情報通信研究機構等による大気圏―電離圏結合モデルGAIAの大気アッシミレーションが利用可能と判明した。赤道スプレッドF現象日々変動特性の解明は最重要課題であるので、研究スケジュールを見直し、観測データとGAIAモデルとの詳細比較解析を追加実施するため、期間延長をすることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
大気圏―電離圏結合モデルGAIAとEARおよび衛星=地上ビーコン観測データ等との比較研究を行う。特に赤道スプレッドF現象が活発か否かに注目して、それと創刊のある大気圏の現象が現れていないか、注意深く解析を進める。研究成果を論文にまとめる一方、衛星=地上ビーコン観測の国際シンポジウム等に参加して研究発表する。
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