研究課題
基盤研究(B)
本研究では、29億年前頃に生じた南アフリカのカープファールクラトンのポンゴラ氷期における環境変化を地質学的に解析し、さらにインドのダールワール、シンブン、バスターやオーストラリアのピルバラといった各同時代岩体との比較を行う。本研究計画初年度では, インド南部ダールワール岩体に重点をおいた現地地質調査を2回にわたって行い、以下の項目を実施した。1. 研究代表者(Satish)と4名の研究分担者(豊島、外田、亀井、片岡)、研究協力者(大学院生)が、Indian Institute of Science (Bangalore)のSajeev准教授の協力を得ながら、インド南部のダールワール岩体の調査を2回実施した。調査は二つのグループに分かれて行った。グループ1は主に片岩帯を、グループ2は基盤になる片麻岩や花崗岩を中心に、合わせて20日間現地調査を行った。2. 野外では岩相記載を詳細に行い、層序対比のため柱状図を作成した。また地質構造データ、堆積相の詳細な記載も行った。室内分析に必要な試料を採取し、地質構造および堆積構造の解析から、変形履歴や古流向を検討中である。3. 室内分析は野外で採取した試料について、以下の分析を行った。(a)記載岩石学的検討:野外で採取した多様な岩石試料について、薄片を作成し、顕微鏡下での岩石記載や電子顕微鏡を用いた鉱物微細構造の観察と変成作用の解析を行った。(b)放射年代測定:岩石学的な基礎データをもとに厳選した試料から、U-Th-Pb年代測定用にジルコン・モナザイトの鉱物分離を行った。(c)同位体分析:野外で採取した試料について、XRFとICP MSによる全岩化学分折を行った。島根大学においてストロンチウム、ネオジムの同位体分析の試料(片麻岩や花崗岩)を、新潟大学において炭素・酸素・硫黄の同位体分析の試料(片岩や石灰岩)を準備中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画では、初年度に主としてインドでの野外調査を行い、次年度に南アフリカの地層と対比する予定である。計画通りインドダールワール岩体の調査を実施し、現段階では採取した様々な岩石試料の化学分析を行っている。目標とする大陸間の太古代の地層対比の見通しが得られたため、おおむね順調に進展していると判断できる。また、採取したストロマトライトの炭素同位体データから生物起源性を示す値が得られた。過去に得られた同岩体の硫黄同位体のデータとあわせた解釈を行うことで、太古代末期の詳細な年代時系列での同位体進化の解析が可能との見通しである。
今後、南アフリカのカープファールクラトンのポンゴラ帯またはダールワール岩体に現地地質調査を継続し、ポンゴラ氷期前後に形成された縞状鉄鉱床やチャート、ストロマトライト、氷礫岩について地質学的特徴や同位体年代、全岩化学組成を検討し、放射性および安定同位体組成を抽出・比較することで、太古代ポンゴラ氷期による海洋・大気環境の局所的・広域的変化を評価する。これまでの研究では特にダールワール岩体における化学的なデータや年代時系列での同位体進化の解析は不足している。そこで昨年調査した試料の希土類元素組成、ストロンチウム、ネオジム同位体のデータを加えることで大陸間の太古代の地層対比が可能となる。
海外調査の旅費が安くなったため、次年度使用額が生じた。次年度の調査費として使用する計画である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (22件) (うち査読あり 22件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (34件) (うち招待講演 2件)
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