研究課題
基盤研究(B)
平成25年度は,研究目的に掲げた東南アジアのパレオテチス沈み込みによる島弧-縁海系の基本的地質情報を得ることを目的に,4回の野外調査を実施,計9名を日本から派遣した.第1回目はタイ北部で実施し,スコタイ帯の三畳系ランパン層群及びウトラディ東方のナン縫合線を検討した.ランパン層群では,主にその炭酸塩層序と堆積年代を検討した.ナン縫合線では,苦鉄質・超苦鉄質岩の分布状況を把握し,今後の精査の基礎情報とした.第2回調査はタイ中部および北部で実施した.タイ中部ではインドチャイナ地塊陸棚相石炭系を対象に,特に蒸発岩と炭酸塩岩を調査した.蒸発岩の年代については従来の研究で層序関係から石炭紀のものとされているが,調査では蒸発岩と直接接する貫入岩を新たに確認し,そのジルコン年代検討のための試料を得た.炭酸塩岩についても詳細な年代と層序検討のための試料が得られた.北部ではスコタイ帯のランパン層群の砕屑性ジルコン年代検討のための砕屑岩試料を採取した.3回目調査はタイ北部,ナン縫合線の超苦鉄質岩を対象に行った.その結果,最上部マントル~モホ遷移帯~下部地殻に相当する部分の起源と考えられるハルツバーガイト-ダナイト-斑れい岩からなる一連のオフィオライト複合岩体を見出した.これについては次年度に精査を行う予定である.4回目調査はタイ北部の地質体の北方延長を検討するため,ラオス北部で実施した.この調査では,ウドムサイ~ルアンナムタ間において,層序および年代的にタイ国北部のスコタイ帯を構成するペルム系ンガオ層群,三畳系ランパン層群に対比可能な地質体を見出した.これら平成25年度に実施した調査で得られた試料については,現在処理を進めている.また,これまで本科研参加者が得ている情報を共有し,より具体的,効果的な科研調査実施計画を検討するため,7月に筑波大学においてワークショップを実施した.
2: おおむね順調に進展している
本研究を遂行する上で現実的に重要となる点は,研究目的を達成するために,コストパフォーマンスも含め如何に効率的な野外調査を実施するかということである.平成25年度は計4回の野外調査をタイ国中・北部およびラオス北部で実施したが,調査には科研参加研究者の専門に合わせ各回1~3名が日本から参加し,それに現地の海外共同研究者が加わるという体制をとった.その結果,研究計画に掲げた東南アジアのパレオテチス沈み込みによる島弧-縁海系の基本的地質情報を得るという点に関して,概ね当初計画通りの調査が実施でき,且つ地域地質情報の十分な理解と今後の詳細な検討に向けた試料採取が行えた.そのため,初年度を終了した段階での自己点検による評価としては,おおむね計画通り順調に調査,研究が進展しているという感触を得ている.
当初の研究計画に沿って野外調査を実施するとともに,これまでの調査で得られた試料の処理を科研参加の各研究者のもとで進める.得られたデータについて逐次学会発表,公表論文としてまとめる.データの取りまとめに関しては,科研代表者,分担者,海外共同研究者間で随時情報の共有を図っており,そのいくつかについてはすでに成果としてまとまりつつある.このように研究はおおむね順調に進展しているので,今のところ研究計画に関して大幅な変更は必要ない.また,研究を遂行する上での課題,問題点等も現状では見当たらない.
研究経費節約のため,タイ国での調査で採集した岩石サンプルの一部を,追加料金不要の航空機預入手荷物として一部持ち帰ったため,サンプルの輸送料が当初見積もった金額より若干少なく済み,47452円の繰り越しが生じた.サンプル郵送料(費目:その他)の一部として繰り越し,平成26年度に使用する.
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (28件)
Island Arc
巻: 23 ページ: 33-50
10.1111/iar.12057
Journal of Earthquake and Tsunami
巻: 8 ページ: 1450007 (35 p.)
10.1142/S1793431114500079
Marine Micropaleontology
巻: 110 ページ: 8-24
10.1016/j.marmicro.2013.07.006
Journal of Asian Earth Sciences
巻: 79 ページ: 206-223
10.1016/j.jseaes.2013.09.030
Geological Society, Special Publication
巻: 376 ページ: 33-46
10.1144/SP376.11
巻: 376 ページ: 235-267
10.1144/SP376.5
Chemical Geology
巻: 352 ページ: 202-210
10.1016/j.chemgeo.2013.06.003
Earth, Planets and Space
巻: 65 ページ: 331-336
doi:10.5047/eps.2012.08.013
巻: 75 ページ: 141-157
10.1016/j.jseaes.2013.07.019
巻: 74 ページ: 50-61
10.1016/j.jseaes.2013.06.006
Tectonophysics
巻: 592 ページ: 80-93
10.1016/j.tecto.2013.02.006