研究課題
2014年度は,2013年度に掘削したコアと合わせて,白亜紀前期のツァガンツァフ層最上部からシネフダグ層,そしてフフテグ層最下部への連続層序を確立するためのコア採取を目的として,モンゴルゴビ砂漠南東部シネフダグ地域において,ボーリング掘削調査を8月中旬に行った.現地案内・掘削業者との交渉にはモンゴル科学アカデミー古生物センターのIchinnorov博士があたり,安藤をはじめ分担者の長谷川精氏らが参加した.深さ193m,47mの二本のコア採取をすることができ,2013年度のものを含めて,全長390mにおよぶコアが得られた.それらはフフテグ層上部~シネフダグ層下部までの層準をカバーしており,東アジアで初めて得られたアプチアン階の連続的な地層(湖成層)記録である.掘削後のコアは,ウランバートル市内の名古屋大学フィールドリサーチセンターで,コアの分割処理および一部の分析を行い,日本へ輸送した試料は,昨年度の試料と合わせて,無機化学分析(XRF,XRDによる主要元素,粘土鉱物組成),有機化学的指標(TEX86)による湖水温測定,バイオマーカー組成,凝灰岩中のジルコンのFTおよびU/Pb年代測定等の各種分析を行っている.層序については昨年度までの現地露頭調査およびコア観察調査成果に基づき,詳細な岩相・堆積相層序が確立できた.花粉,カイエビ,貝形虫の化石解析についても進めており,湖底表層の堆積環境を反映した岩相変化に対応した産出様式の変化が明らかとなってきた.特にコアの岩相観察からは,露頭では風化や破片化の影響で見出しづらい,年縞,数百,数千,数万年スケールの複数の階層性周期が見出され,湖水位(降水量),化学風化度,古気温指標変動の復元に向けた古環境変遷の考察を進めている.これらの成果の一部はIGCP608国際シンポジウムや日本地質学会等で概要を報告した.
2: おおむね順調に進展している
ボーリング掘削は,地下深部での地層の変質鉱物(石膏)による影響が大きいことが予想されたため,3か所で各80mのボーリング3本,計240mを予定していた.1本目は最上位の地層であるフフデグ層から掘削を開始したが,50m以深での変質鉱物が少なく非常に硬質の良いコアが採取されたため,作業の進行上,砂漠での過酷な掘削条件を考慮し,コアの状態の良い193mまでを掘削した.残りの47m分については予定していた2本目のサイトで掘削し,計240mを予定期間を大幅に短縮して,研究に適した良いコアを掘削することができた.分析については随時進めており,おおむね順調とみなされる.
2013年,2014年の計3本全長390mのコアについては,これほど良い条件で掘削された白亜紀前期の湖成層のコアは東アジアでは初めてであり,学術的に非常に貴重であるが.掘削層準の対比が,鍵層が乏しいために非常に難しい.今後,いくつかの環境指標変動の比較の際にはこの点を考慮する必要がある.分担者が行ってきたこれまでの分析成果を取りまとめ,白亜紀前期アプチアン期のモンゴルの大陸内部巨大湖における古環境変動とその実態や意義を総合的に考察していく.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Paleontological Research
巻: 19 ページ: 26-32
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Alcheringa
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http://paleogeo-ando.sci.ibaraki.ac.jp/