研究課題/領域番号 |
25303006
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
加藤 尊秋 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (20293079)
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研究分担者 |
安井 英斉 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (70515329)
門上 希和夫 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60433398)
乙間 末廣 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (90124338)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 廃棄物再資源化 / 環境政策 / 環境技術 / 食品残渣 / ベトナム |
研究概要 |
第一に、ベトナム・ダナン市における食品残渣利用の実情と食品残渣利用を通じた物質フローの把握のために、平成25年10月にダナン市内ホアバン県の養豚業者に対する調査を行い、食品残渣の収集量と食品残渣の成分に関する情報を取得した。食品残渣の成分としては、衛生面から注意すべき化学物質(重金属、ヒ素および残留農薬)の含有量、また、豚の安定した飼育の観点から栄養分の量を計測した。重金属および残留農薬については、日本等の飼料の安全性基準と比較して、危険と思われる水準の蓄積は見いだされなかった。栄養分については、日本の飼料基準と比較すると、脂肪分が過度に含まれていた。ただし、ホアバン県の養豚業者へのヒアリングでは、この点は、豚肉の質との関係において特に問題視はされていなかった。また、資料調製時の温度管理に着目して養豚場における食品残渣の飼料化手順の把握を行った。これらの結果、および養豚業者へのヒアリング結果をもとに、食品残渣の需要に影響を与える要因の整理を行い、需要のモデル化に必要な統計データの収集を行った。 第二に、今後の食品残渣収集網の活用策を検討するために、今後10年間にわたるダナン地域の社会経済シナリオの検討を行った。 第三に、食品残渣収集網の将来的なあり方について、代替案を作り、検討するための準備を行った。まず、国内外の食品残渣利用の成功および失敗事例を収集、整理した。このために、東南アジアおよび東アジアの食品残渣利用に関する文献を収集した。この作業では、本研究で焦点を当てている中規模都市に加え、小規模都市(福岡県大木町)や大規模都市(韓国・ソウル市等)の事例も含めた。また、ダナン市の市場から発生する有機性廃棄物を埋め立てないしコンポスト化した場合の温室効果ガス発生量に関する試験的なLCA分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ベトナム・ダナン市(人口92万人)をケーススタディとして食品残渣リサイクル網に影響する社会的な要因を定量的に検討した上で、現状維持、食品残渣利用の公的支援、飼料以外への利用先転換の3つのシナリオにおいて環境および社会への影響を予測し、今後10年間を見越した最適な食品残渣リサイクル政策を見いだすことを目指している。平成25年度は、この目的達成に必要な情報の収集と整理を行った。この作業は、当初計画に沿って① 現状把握と社会変化-物質フロー連動モデル構築、②社会経済シナリオづくり、③食品残渣収集網の活用のための代替案づくりの3つの側面から実施した。まず、項目①に関しては、先述の通り、10月にダナン市内の養豚業者に対する調査を実施することができ、本研究で社会変化と食品残渣利用に関わる物質フローを関連づけたモデルを作るために必要な様々な基本的な情報を得ることができた。項目②に関しても、当初の予定にしたがい、ダナン地域の社会経済シナリオづくりに必要な統計データ等を取得できた。また、項目③についても、効果的な代替案づくりのために必要な情報収集を行うとともに、ダナン市内の市場から排出される有機性廃棄物について、完全に埋め立てを行う場合とコンポスト化を行う場合を想定し、温室効果ガス発生量に関するLCA分析を試験的に行い、今後のより詳細な分析に必要な事項を確認することができた。このように、平成25年度の本研究は、ほぼ、当初計画に沿った形で進行した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、食品残渣供給者側の社会調査を行い、社会変化と物質フローの連動性に関するモデルの精度を高める。第一に、食品残渣の供給元として重要な市場に着目し、食品残渣を含む有機性廃棄物の発生量、および処理方法について調べる。市場の廃棄物処理については、ベトナムでは、ほとんど既存研究が存在しない。この調査では、廃棄物の組成に加え、選択実験法等を活用し、市場を取り巻く状況の変化に応じて店員による食品残渣の分別行動がどう変化するか、予測するためのモデルを作る。また、食品残渣リサイクルの将来像を描く基礎資料の一つとして、若年層に着目した調査も行う。ダナン市における研究代表者らの実地調査経験を活かし、ベトナム側研究協力者とともに都市環境公社や地元自治会組織との調整と調査実施をすすめる。なお、市場の調査は、食品残渣の扱いを考える上で重要なため、結果の頑健性を確認するためにダナン市以外での調査も併せて行う。また、社会経済シナリオと代替案の精度を高め、食品残渣収集網の将来的な活用に関する代替案の評価を開始する。 平成27年度には、年度半ばを目処に代替案評価結果とダナン市の今後の食品残渣処理策に関する提案をまとめる。その後、さらに半年をかけてこの提案の精緻化をはかる。必要に応じてシナリオの修正や新たなデータの追加、現地での関係主体に対するヒアリング調査等を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
北九州市立大学が実施している環境リーダー育成事業と連携して本研究を進めた結果、研究者および大学院生の旅費と現地での謝金等を節約できた。この分を平成26年度に予定される大規模調査(市場から出る食品廃棄物)の調査精度向上のために当てることとした。 食品残渣の供給源の一つとして重要であり、しかも、ベトナムでは、ほとんど調査事例がない市場の有機性廃棄物について、大規模な調査を行う。この調査は、食品残渣の供給者の行動を決める要因をモデル化する上で重要であり、本研究の核の一つである。このため、結果の頑健性を確認し、社会変化にともなう食品残渣排出行動の変化を予測するために、本研究の主要対象地であるダナン市に加え、比較用にハノイ市での調査を行う。当初計画には含まれていなかったこのハノイ市調査を実施するために、上述の次年度使用額を用いる。
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