研究課題/領域番号 |
25303007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 亮 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30177927)
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研究分担者 |
岸田 潔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20243066)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コミュニティ組織力 / 農道 / 生活社会基盤 / 社会経済活動 / パプアニューギニア / 東ティモール / ミャンマー / トンガ |
研究実績の概要 |
開発途上国農村部では,生活社会基盤である農道や防災対策インフラの整備が進んでいない.急斜面,渡河部,低地,雨季の集中豪雨など地形上,気象上の厳しい条件が重なることが多い.従来の対策は,まず先進国より導入された設計基準を当てはめ積算する.大きな予算が算出されるが,国家予算が十分でない中で都市部に比べ農村部の生活社会基盤は整備が進まず,放置されている.長年にわたり社会サービス(学校,診療所,市場など)へのアクセスが制限され,農村部の貧困,都市部との貧富の差の拡大の一因となっている. 本研究では,現地調達可能材料と人力による簡便な手法(簡便小規模インフラ整備手法)による農道,防災対策インフラ整備を提案し,その効果を検証する.本事業初年度(平成25年度)では,簡便小規模インフラ整備手法を採用する実際の事業を選定し(パプアニューギニア,ミャンマー,東ティモールでの事業),その施工条件,内容と整備状況を調査した. 平成26年度は,パプアニューギニアの事業地で,事業終了から約一年後の道路状況を調査した.また沿線住民にアンケート調査を実施し,住民の事業後の道路整備活動,くらしの変化,事業に対する満足度について把握した.さらに比較のため,その近傍で同時期に実施された,施工業者が機械により整備した道路とその沿線住民に対しても同様の調査を行った. 東ティモールでは,道路省の直営方式で住民参加を得て施工が行われた農道事業と,施工業者が沿線住民を傭上し機械と併用して行われた農道整備事業との,道路出来形,影響評価に関する情報収集を行った. ミャンマーで実施されている住民参加による農道整備事業では,開発人類学的な視点からコミュニティへの影響について情報収集を行った.また,現地行政やコミュニティ組織との協働による防災工の具体化に向け,トンガにおける調査を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度から27年度までの3年間の研究事業の2年次にあたる.パプアニューギニア,東ティモールでの生活道路整備事業は,ほぼ予定どおり平成25年度,26年度までに各々終了した.昨年度(本研究事業の初年度)は,各事業の道路整備の内容や出来形,歩掛や費用について整理された.そのうえで平成26年度は,事業終了から約1年後の道路状態,コミュニティによる道路整備活動の持続性や社会経済活動への影響を調査することができた.このアンケート調査結果は平成27年度にかけて分析され,まとめられる. アジア域でミャンマーを新たに対象国とした.国際社会による支援が増え経済発展が見込まれる一方で,都市部と農村部との貧富の格差が広がり社会不安の発生が懸念される,農村開発事業の重要性が高く,平成25年度より実施されている住民参加による生活道路整備事業を研究対象とした.当初予定していたフィリピンでの事業についても現地協力機関を通した調査,情報収集は継続している.気象や地形条件,資機材の調達可能性,コミュニティの組織力,行政能力のレベル等についてパターン化された,有効な簡便小規模インフラ整備事業の実施方法の提案につなげることができる. 現地行政やコミュニティ組織との協働による防災工の提案に向けて,現地国との連絡調整の進捗からトンガで第一回の調査を実施した.計画時の対象国(フィジー,ソロモン諸島)と異なるが,期間内での研究成果を最大限にするための代替措置である. 以上の理由から,本研究事業の達成度はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
複数国でこれまでに収集したデータや,アンケート調査結果の分析とまとめを行う.アジア・大平洋州の開発途上国における,有効な簡便小規模インフラ整備事業の実施方法の提案つなげる.研究対象事業地での,気象や地形条件,資機材の調達可能性,コミュニティの組織力,行政能力のレベル等について整理し,パターン化するための条件を考察する.また各事業のコミュニティへの影響を,共通の指標で評価する. 分析やまとめの段階で確認が必要と判明した追加情報については,今後再度現地入りし調査する.同時に各事業成果の持続性を検証する. 太平洋州における行政と住民の協働による防災対策工のパイロット事業については,今後の現地機関との打合せを経て,調査方針を決定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査の際に必要としていた車両レンタルや消耗品の費用を削減することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の取りまとめに際し、追加で現地調査を実施する可能性や現地機関との打ち合わせを実施する必要があるため、「次年度使用額」は主に旅費として使用する。
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