研究課題
基盤研究(B)
平成25年度はErpenbeck博士を訪問研究者として中尾の研究室に受け入れ、LC-MSによる水族館にて飼育可能な海綿のメタボローム解析の共同研究を行った。D’AuriaおよびZampella教授との共同研究において、Theonella属海綿由来のステロイド化合物の類縁体群について分析を行い、それらの生理活性について検討を行った(文献1)。一方、平成26年度以降に予定しているイタリアでの海綿採集、および共生微生物のメタゲノム解析、成分のメタボローム解析実施に向けて、予備的な研究として日本国内産の海綿を採集して、飼育実験、共生微生物培養実験、LC-MSによるメタボローム解析条件の検討、化合物の生理活性評価を行った。特に鹿児島県産のMycale属の海綿については、構造的にも多様な生合成経路による二次代謝産物が豊富に含まれ、これらの中には本研究で注目しているエピジェネティクス制御に関わるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害活性など、各種生理活性化合物が含まれていることを明らかにしていることから、この海綿に焦点を絞って採集を行い、各成分の分析・精製、各種生理活性評価を行っている。また、HDAC阻害活性と細胞のヒストン修飾への影響をリンクさせて観察することで、エピジェネティクスに影響をあたえうる化合物の探索をより詳細なレベルで行っている。得られた化合物を共生微生物群に投与することで、なんらかの影響がみられる場合には共生関係の維持にかかわる可能性が考えられるため、より詳細に検討を行う。海綿の飼育についても試みたが、非常にデリケートでわずか数日しか生存させることができなかったため、平成25年度は一度しか飼育実験が行えなかった。しかしながら、本海綿に含まれる微生物については、生存中に海綿からメッシュ等で分離したものを凍結保存しており、これらについて成分のメタボローム解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
フィールドワークのための予備的研究は上にのべているように、採集、飼育、成分分析、活性評価、共生微生物の分離・解析の各項目について、おおむね順調に進んでいる。しかしながら、昨年度後期より学科主任に就任したため、長期の海外出張ができる期間が限られてしまった結果、昨年度予定していた予備的な訪問のスケジュール調整がかなわなかった。
今年度は昨年度の研究を継続して進めるとともに、現地でのフィールド調査を実施する。昨年度予備的な調査訪問がかなわなかったため、現地に長期滞在して研究実績のある九州大学の宮本智文教授に、現地での研究活動を滞りなく進めるための準備について助言を得られるよう、協力の確約を取り付けている。
残額が少額であるため0円となるような使用法がなかったため。平成26年度の予算に組み込んで消耗品などとして使用する。
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