研究課題
基盤研究(B)
1. フィリピンのルソン島で海藻および貝類を収集し、臭素化ビフェノール(OH-PBDE)生成の環境要因を調べ次のことが判明した。(1)海藻の生長期でOH-PBDE分布に違いが生じ、貝類が取り込むOH-PBDEの量が変わる。(2)貝類のうちThorny oysterはOH-PBDEを取り込む特殊な機構がある。(3)ミンダナオ島の貝類(5種)分布調査では、OH-PBDEの生産量に種差および季節変動がある。(4) 若い個体ほどOH-PBDEの取り込みが大きいが、成長とともにMeO-PBDEへの変換がみられる。これらは共生微生物が関与していることを示唆する。2. OH-PBDEを生産するバクテリアの菌種を特定するために海藻(Sargassum cristaefolium)および貝類(Spondylus sp)の一部をとり、コロニーごとに分離培養した。大量培養した菌体から臭素化ビフェノールを生産する菌体をしぼりこみ、遺伝子解析を行った。16S rDNA塩基配列解析の結果、2種のOH-PBDEを生産する菌株はEnterobacter sp.、2種のMeO-PBDEを生産する菌株はPseudoalteromonas sp.と推定された。3. 共生バクテリアはバナジウム依存性ブロモペルオキシダーゼ(v-BPO)を介してOH-PBDEを生産すると考えられる。バナジウム量とv-BPO酵素活性の相関を調べるため、H25年度はまず海藻中のバナジウム量をICP-MSを用いて測定し、同じ試料の臭素化合物の残留量と比較したところ、臭素化ビフェノール総量とバナジウム量が正の相関を示した。
2: おおむね順調に進展している
H25年度はフィリピン、台湾およびインドネシアで海藻および貝類のサンプリングを行った。インドネシア(ジャワ島)で採取した海藻、魚貝類の分析調査が終わっていないが、OH-PBDE生成の環境因子、生合成プロセスおよび生産菌の解明については概ね順調に進行している。
フィリピンおよびインドネシア(分析結果によってはマレーシアまたはベトナム)での海藻サンプリングを継続し、OH-PBDEの生成要因、生合成機構および食物連鎖について解明する。同時に、OH-PBDEの抗菌、抗酸化および抗炎症活性試験を継続して行う。
インドネシアでのサンプリング時期が3月にずれこんだ。そのため、海藻抽出成分の化学計測および抗菌スクリーニング試験の開始が遅れた。サンプリングした試料の前処理および化学計測に必要な試薬および抗菌試験のための試薬にあてる。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
Food Chemistry
巻: 154 ページ: 145-150
dx.doi.org/10.1016/j.foodchem.2013.12.069
Environmental Pollution
巻: 185 ページ: 228-233
dx.doi.org/10.1016/j.envpol.2013.11.002
Environment International
巻: 63 ページ: 19-25
dx.doi.org/j.envint.2013.10.016
Arch. Environ. Contam. Toxicol.
巻: 64 ページ: 467-474
dx.doi.org.10.1007/s00244-012-9858-0