研究課題/領域番号 |
25303014
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
渡邉 邦夫 埼玉大学, 理工学研究科, 客員教授 (00008880)
|
研究分担者 |
三村 衛 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00166109)
長田 昌彦 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00214114)
藤井 幸泰 公益財団法人深田地質研究所, 研究部, 主査研究員 (10311268)
小口 千明 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20312803)
橘 伸也 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90432567)
菊本 統 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90508342)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 遺跡構造物 / 地盤変形 / 土中水分変化 / 塩類風化 / 遺跡修復 / タイ / エジプト / 変形モニタリング |
研究実績の概要 |
平成26年度は、平成25年度内の研究をさらに発展させる年度であった。平成26年度の研究実績は下記のようである。 ①遺跡構造の変形モニタリングの技術開発を行った。タイおよびエジプトの遺跡を対象としたが、エジプトでは、社会混乱の影響やISの活動により、自由な研究ができない点があった。そのため、長期モニタリングの技術開発では日本の遺跡も用いた。具体的には、横須賀の歴史的ドライドックや、富岡製糸場構造物の利用であり、変形評価技術につなげた。 ②タイでは、アユタヤ遺跡やチェンマイ遺跡、エジプトでは、カルガオアシス内の遺跡変形に与える土壌水分影響を調査した。とりわけ、カルガオアシスの灌漑に伴う遺跡変形と、その変形防止のための地下水揚水工法の効果を調べた。また、乾燥地帯における、土壌水分と析出塩類について調査した。例えば、カルガオアシスではthenardite(Na2SO4)が検出され、一部の試料からはhexa-hydrite (MgSO4.6H2O)、gypsum (CaSO4.2H2O)、halite (NaCl)も検出された。 ③原地の不飽和地盤の強度・変形特性を調べるための室内要素試験機の整備を行った。特に、不飽和地盤の、水分移動・変形連成現象を室内試験で調べた。平成26年度以降、それを定式化する研究を行いうる可能性を明らかにした。さらに、これに関して、アクセスの良い、我が国の土壌水分と遺跡変形の関係を古墳墳丘を対象に調査した。具体的には、物理探査による墳丘構造の推定,非破壊試験による墳丘密度・含水比の把握,発掘攪乱土を用いた墳丘土の水分特性曲線と透水特性を把握し,得られた土質定数を用いて降雨に伴う墳丘の浸透流解析と安定解析を行うことにより,降雨で崩壊した古墳の不安定化現象を説明する枠組みを構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に調査できなかった、エジプトの遺跡変形、塩類風化と土中水分に関する研究を行った。この結果、たとえば乾燥地での地中水分制御が大事であることや、構造物の長期安定性をそこなう析出塩類の特性を明らかにした。また、土中水分と構造物の長期変形との関係をとらえるため、平成25年度に準備した室内実験装置を用いて水分‐変形連成現象の評価を行い、数値解析法の開発を研究した。この研究の中で、タイやエジプトなどの外国ばかりでなく、我が国においても高精度で遺跡の長期安定性を調べることの必要性が大きくなった。そのため、明治時代に建設された横須賀の第一ドライドックや富岡製糸場の建築物変形を研究した。また、土中水分変化の影響を受けやすい、古墳墳丘の水分移動と変形の研究を行った。これは、乾燥地、雨季と乾季のある地域、我が国のような湿潤環境の遺跡安定性を比較研究するために必要である。このように研究は初期のテーマの進化とともに、広がりを見せている。これはおおむね研究が順調に進んでいることの表れである。発表論文、講演も後述するように多い。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度である平成27年度も、基本的には、前年度までの研究成果を基礎に発展させてゆく。特に、タイの遺跡ストゥーパの基礎構造を物理探査により明らかにし、また土壌サンプルを採取して地盤の透水性、強度、析出塩類を総合的に評価しうる技術を開発する。また、我が国の古墳墳丘の長期安定性を地盤工学的に評価する研究を進めて行く。
|
次年度使用額が生じた理由 |
基金が余った理由は、平成26年度に予定していたタイ、アユタヤ遺跡における、土壌サンプル採取および、遺跡ストゥーパ基礎の土壌構造の高精度表面波探査を平成27年度に行う事としたためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
使用は、①土壌サンプリング、②高精度表面波探査、③ストゥーパ変形モニタリング、④析出塩類採取を総合して行う。そのため、27年度の配分予算と、26年度に繰り越した予算を合わせて使用する。
|