研究課題/領域番号 |
25303022
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
新谷 眞人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30434319)
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研究分担者 |
岩崎 好規 一般財団法人地域地盤環境研究所, その他部局等, その他 (80450899)
中川 武 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30063770)
下田 一太 筑波大学, 芸術系, 助教 (40386719)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カンボジア / アンコール遺跡 / 組積造 / 変位観測 / 構造補強 |
研究概要 |
本年度は以下の項目について研究を進めた。 <3次元デジタルデータの歴史的組積造建造物の対策工設計・施工への活用に関する研究と実践>:アンコール遺跡バイヨン寺院を対象とした風洞試験の実施と評価を実施した。その際、3Dレーザースキャニングデータから3Dプリンタを用いて風洞試験用模型を作成する手法を新たに提案し実践した。そうした手法は、図面化並びに模型製作が非常に困難である建造物において、非常に有用かつ汎用的な手法となり得ると考える。風洞試験により得られた知見は強風対策の設計に活かされるものである。 <離散体力学手法に基づく空積みの組積造建造物の安全性評価手法及び対策工の設計法の研究>:不連続変形法に基づいて対策工設置箇所の数値解析を実施した。併せて、その箇所は変位観測を継続的に実施していることから、応力及び変位に関する数値計算結果との比較検討も実施した。 <砂岩材の破壊強度に関する知見と新たな補強システムの提示及び補強材料選定のための材料試験結果の蓄積>:砂岩材において含水率を考慮した圧縮、強度試験を実施し、含水状況を考慮した石材の設計強度を導いた。 <観測システムの構築と分析手法の研究及び遺跡の安全観測システムの実例の提示>:バイヨン中央塔におけるいくつかの亀裂付近に変位計、含水率、表面温度等を設置しモニタリング結果を分析した。それら観測された亀裂変位に対して、影響度が高いと推定される気温及び降雨を要因とした線形モデルを構築することで亀裂変位の要因分析を実施した。併せて、中央塔上部に周方向変位を計測するための観測システムを新たに設置した。周方向へのはらみ出しに起因する変位を観測するための観測システムであるが、より長期の観測データを採取し今後分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の研究計画に従い順調に進行しているものと考える。加えて、3Dレーザースキャニングデータから3Dプリンタを用いて風洞試験用模型を作成し、風洞試験を実施するなどの新たな試みも実施した。今後、より実対策に則した、補強対策工の開発に主眼を置いて研究を進めると共に、昨年度設置した観測システムのより長期間のデータ採取を行い分析も進める。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、石積みの水平力作用時の耐力を増加する補強材の開発を主に行う。よって、その補強材を石材に施した場合の強度試験等を実施する。 次に、対策工の設計法に関して、これまでに、概ね不連続変形法理論に基づく空積みの組積造建造物の安全性評価手法は構築されつつある。前述した、強風時の風圧力を外力として作用させた場合の不連続変形法理論に基づく数値解析手法も概ね構築されつつあることから、本年度は対策工の設計のためのより実践的な数値解析を実施する。 次に、観測手法に関しては、昨年度に、気温、降雨量、風速、石材表面温度、石材含水率、亀裂における変位、の観測システムを設置した。そして、3カ月程度の短期間における亀裂における変位に対して気温、降雨量の影響を定量的に分析する手法を提案した。本年度は、その観測システムを用いてより長期間の観測を実施し、亀裂における変位のメカニズムの分析を行い、分析手法を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
観測システムにおいて、当初の想定より安価に収めることができたことが要因として大きい。この理由として、より安価で適切な観測機材が商品化されたことなどが理由として挙げられる。観測システムが安価になっているものの当初の研究計画を満たすには十分な観測システムが構築できたものと考える。 主にカンボジア現地への調査旅費ならびに対策工の開発に関わる試験費用に使用する。対策工の開発に関わる試験費用としては、試験体の作成並びに試験に関わる経費、現地スタッフの試験補助費用等である。また、国際会議等への論文投稿費用等にも支出予定である。
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