昨年度に引き続きショップハウスの屋上に形成されている小規模不法占拠地に焦点をあて、その空間構成や共同性を現地調査にもとづいて明らかにする作業を行った。 住居の実測ならびに施設構成、外部空間の利用実態等のデータを採集するとともに、個々の世帯の生活実態の把握やコミュニティ維持のための仕組み、上下水道等のインフラ管理の仕組みをヒアリング調査をもとに明らかにした。 またプノンペンの旧市街地を対象に路地・歩道のアクティビティの調査ならびにショップハウスによってつくられる町並み景観の調査を実施した。 屋上居住地での水の入手方法は次の4 つに分類することができた。①自己入手型(公共の水道や川)②民間サービス利用型(商人)③人的ネットワーク利用型(下階や屋上の住民、近隣ビル)④公共サービス利用型(水道公社)上水設備については公社を利用する住居が9 割を占めるのに対し、住居内トイレの設置率は6.5 割と低く、下水については近隣住居との共用関係がより必要とされていることがわかった。上水と下水ともに下階や近隣住民との共用関係が必要とされており、住民の関係性が自律性を生み出し居住環境を保っている。 歩道・路地空間のアクティビティに関しては、路地の空間構成と人々の活動を、路地空間情報に変換して分析するための基礎となる手法の概要を検討した。今後は、調査地区内の全街区を対象とした分析を通じて前述の指標の有効性を検証し、路地空間の構成と活動の特徴を抽出するとともに、プノンペンにおける路地と人々の活動の関係を表現するための空間活動モデルを構築し、空間計画・評価手法として位置付けを行う予定である。
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