研究課題/領域番号 |
25303025
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堀 賀貴 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20294655)
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研究分担者 |
池口 守 久留米大学, 文学部, 准教授 (20469399)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リバースエンジニアリング / SFM / モザイク / 空間構成 / レーザースキャニング |
研究実績の概要 |
予定通り8月から9月にかけてポンペイ,ヘルクラネウム,およびオスティアにて調査を実施した。レーザースキャナ三台を導入し,機動的かつ効果的に実測調査を遂行し,期待を上回る精度でデータを収集できた。また,カラーデータについても取得を試み,実験的ではあるが,Web上でのデータ公開の準備を完了した。その結果,研究,調査の目的において示された1)上部空間の構成原理(堀担当:ポンペイでの初期複層建築とオスティアでの高層建築の比較研究)については,計画通り実測データを取得,データの分析を行い,その結果を国際論文として発表した。成果として従来,レーザースキャニングは保存,管理ツールとして使われてきたが,調査・研究ツールとして非常に有効であり,地形測量や高層建築の実測を通じて,新しい学術的成果をもたらす可能性があることを示した。2)モザイクと建築空間の関連性(堀担当:ポンペイ,オスティア住宅空間のソースコード)については,本年度までに研究をほぼ完了し,論文として発表した。ここではモザイクの精密な実測を通じて,オスティアを代表する住宅である[ミューズの家」の空間構成について新たな知見を示した。また国際論文1編として,新たな測量技術としてSFMの可能性を示した。3)リスク管理空間としての都市(堀・池口担当:災害対応,廃棄物処理,交通規制が都市空間におよぼす影響)についてはデータ収集をほぼ完了し,分析をすすめ,その途中経過を論文として発表した。ここでは,ポンペイの都市内交通が従来のように統制されたものではなく,あくまでも衝突をさけるために規制に重点が置かれていたことを示した。このように研究計画を大きく上回る進捗状況を達成し,また期待を大きく超える成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際査読論文2編,国内著名学会査読論文掲載2編・査読中1編という成果発表は計画された成果をはるかに超えた達成度を端的に示している。平成25年度に招聘されたイギリスの学会における特別講演を経て,国際的にも高評価を得ており,ポンペイ遺跡監督局からは調査の中間報告の作成依頼を受けている。また,オスティア遺跡監督所より,今後の調査についても全面的な協力の表明を所長よりいただいており,研究成果の高い評価を示す証左といえる。さらに,準備中の論文も数編あり,計画以上に研究が達成されていることは間違いない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は既収集のデータの分析に専念し,その結果を論文として本年度中に公開する。同時にWeb上に3次元データの閲覧空間を設置する(6月まで)。「ミューズの家」と「イエロドゥーレの家」を予定。本件については,5月までにオスティア遺跡監督所の許可を得るとともに,加えて本監督所公式HPからのリンクも依頼する。 3)についての論文を6月30日までにアブストラクトを国際誌,Remote Sensing, Special Issue "Remote Sensed Data and Processing Methodologies for 3D Virtual Reconstruction and Visualization of Complex Architectures"に投稿する予定。1)についての論文を日本建築学会論文集に投稿する準備を進める。加えて、総合的な成果を国際学会,6th International Workshop 3D-ARCH'2015, 3D Virtual Reconstruction and Visualization of Complex Architecturesにて発表する予定。 さらに,研究が当初の計画より飛躍的に進捗したため,11月に海外から研究者を招いて国際シンポジウムを開催する。すでに,オスティア遺跡監督所のジェルモーニ所長,モレッリ管理部長にはご参加の内諾,さらにオランダ,ライデン大学よりオスティアにおける複合建築の空間構造について研究を進めているシュティーガー博士のご参加内諾をいただいている。現在,オスティアの新港であるポルトゥスで総合的研究を進める英国,サザンプトン大学のケイ教授にも内諾を得た。内容はオスティアにおける古代ローマ都市・建築研究の最新動向について,研究成果を発表するとともに,意見交換,討論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
◎理由 購入する物品の予算が予定よりも安価で購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
◎次年度計画 次年度の消耗品費に繰り込んで使用する。
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