研究課題/領域番号 |
25303029
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
淺原 良浩 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (10281065)
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研究分担者 |
壷井 基裕 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60411774)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 応用地質 / イラン / ザグロス造山帯 / 火成岩 / 鉱床形成 / 放射年代 |
研究実績の概要 |
イランのザグロス造山帯はプレートの沈み込み・衝突などに伴う火成活動が活発な地域であり、これらの火成活動は、この地域に数多く分布する金属・非金属鉱床の主要な生成要因の1つである。これらの鉱床の詳細な成因解析のためには、火成活動や鉱床形成の時期に関する情報は不可欠である。本調査研究の目的は、Rb-Sr、Sm-Nd系の年代法を駆使し、熱水鉱床、堆積鉱床などの年代決定を行い、鉱物学的・化学的データと併せて成因解析を行うことである。 2年目(平成26年度)の現地調査は、初年度に引き続きイラン・ザグロス山脈北西部のGhorveh地域の錫・タングステン鉱床の地域を中心に実施した。また、3年目に予定していたSanandaj地域の予備調査、およびSanandajの南側に位置するKermansha地域のオフィオライト岩体の調査も行った。平成26年4~5月に約2週間、研究代表者、研究分担者(1名)は研究協力者(大学院生1名、イラン側の研究者1名、イラン側の大学院生2名)とともに調査を行った。採取した約50試料の火成岩について、主成分・微量成分元素の定量分析を名古屋大学および関西学院大学のXRF、ICP-MSで、Rb-Sr、Sm-Nd系の同位体比測定を名古屋大学の表面電離磁場型質量分析計で行った。また、約10試料についてLA-ICP-MSによるジルコンU-Pb年代測定を行った。 その結果、Ghorveh地域では、これまで報告されていないアダカイト的な花崗岩が分布することが明らかとなった。ネオテーチス海における背弧海盆の形成と島弧・大陸の衝突がジュラ紀後期に起こっていたことが考えられる。初年度の調査結果からは、この地域の火成活動がジュラ紀後期から白亜紀前期に長期間継続していたことが明らかとなっており、今回の成果は、Ghorveh地域で長期間継続していた火成活動の熱源を探る手掛りとなる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成26年度当初の研究実施計画は順調に進展している。自己点検評価としては、予定していた平成26年度研究実施内容の中核部分は進展しているものの、遅れている点と当初の計画以上に進展している点の両方を含んでいる。その具体的な内容は次のとおりである。 (遅れている点)平成26年度の研究実施計画の内容のうち、鉱石や火成岩の変質部に産する二次鉱物を使った年代測定について、平成26年度末時点ではまだデータが十分に蓄積できていない。その理由は、このザグロス造山帯北西部の火成活動の全容を把握するため、3年目(平成27年度)以降に実施予定の調査、分析を優先したためである。 (当初の計画以上に進展している点)1年目および2年目に調査を行ったGhorveh地域の火成活動について、順調に分析・解析が進み、その一部は論文としてまとめた。平成26年度(2年目)は、本研究に密接に関係する論文を国際誌に4編を公表するとともに、関連論文も国際誌・国内誌に6編公表した。さらに3編が投稿中、2編が投稿準備中であり、研究成果の公表は極めて順調に進んでいる。 平成26年度の研究実施計画は、以上のとおりおおむね順調に進展しており、平成27年度以降の2年間で、当初の研究目的を達成できる見込みが十分ある。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年間で研究実施計画がおおむね順調に進展していることから、今後2年間で現地調査計画の当初予定の繰り上げや、当初予定より広範な地域でのより詳細な調査を進めることを検討している。平成27年度の現地調査は4月下旬から5月上旬に実施予定であり、すでに準備が進んでいる。具体的には、当初4年目に予定していた調査地域である、テヘラン市西方150kmのTarom地域でも、鉄燐灰石鉱床を中心に調査を行う計画である。 初年度および2年目に実施予定であった、鉱石や火成岩の変質部に産する二次鉱物を使った年代測定が未達成であるが、平成27年度以降に鉱床の形成年代の測定を実施する予定である。また、火成岩の化学分析、Rb-Sr、Sm-Nd系の同位体分析、ジルコンのU-Pb年代測定の分析について一部残されていた技術的な問題は、平成26年度内にほぼ解決しており、平成27年度に採取した試料について年度内に分析を完了する体制が十分に確立されている。 成果公表については、平成27年度も論文執筆に取り組み、国際誌に1編ないし2編の論文を投稿する予定であり、学会での成果発表も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
イラン・ザグロス山脈北西部の現地調査を行うための日本側の大学院生の研究協力者2名の旅費を当初予定して計上していたが、日本側の大学院生の研究協力者は1名であったため旅費に差額が生じ、次年度使用額が生じた。なお、研究協力者として当初予定していなかったイラン側の大学院生2名の協力も得て調査を行ったため、現地調査の実施に支障はなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と平成27年度の請求額を合わせて、平成27年度にイラン側の研究協力者を受け入れる計画であるが、当初の滞在予定期間である40日間から90日間に延長し、研究打ち合わせ、共同実験、論文の共同執筆を行う計画である。
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