研究課題/領域番号 |
25303030
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 久郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60178639)
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研究分担者 |
菅井 裕一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70333862)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | )資源開発 / 低品位炭 / 自然発火 / オンサイト試験 / インドネシア / 中国 |
研究概要 |
低品位炭は多様な地域に賦存し,そのガス化利用については日本が高い技術を有するため再び注目されている。石炭埋蔵量の約50%は亜炭や褐炭等の低品位炭で,その改質技術が開発されてきたが,低品位炭は自然発火し易いという欠点を有する。平成25年度の研究では,インドネシア・南スマトラ州の褐炭採掘鉱山(ブキットアサム・タンジュンエニム鉱山)のサイトにおいて,バンドン工科大学の教員及び学生,現地ブキットアサム社の協力を得て石炭の堆積層の発熱特性および温度推移に関する現地オンサイト試験を実施した。試験には,バンドン工科大学で設計・製作し,ジャワ島バンドン市から南スマトラの現地まで搬送したオンサイト自然発火実験用サイロ2種を用いた。鉱山敷地内にサイロを設置し,採掘直後の褐炭を試験試料として用いた2種類の試験を実施した。試験装置に温度センサーを挿入し,サイロ内の空気中のガス成分を可搬型ガスクロマトグラフによって測定した。第一の試験は1tonの石炭を空気流通性が高いメッシュ型サイロに投入し,常温・常圧の自然条件での内部温度上昇過程を測定するもので,他の試験では同じく1tonの石炭を密閉式のサイロに投入した後に,間欠的に300℃の空気を圧入する試験を実施した。実験開始後,供給した空気量,温度分布を一定時間間隔で収録し,約2週間の連続データを取得した。当初,300℃の空気を間欠的に供給したサイロでのより高い温度上昇を予測したが,最終的には自然条件に放置したサイロの温度上昇が上回る結果となった。この理由として,石炭の水分と供給空気の組合せにより温度上昇が左右されることが挙げられ,数値シミュレータを用いた空気及び水分の移動に関するヒストリーマッチングを実施している。なお,試験に使用した石炭を用いて工業分析および示差熱分析を九州大学において実施し,オンサイト試験結果との比較を考察するための基礎データを測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究をバンドン工科大学の協力を得てインドネシア・南スマトラ州の褐炭採掘鉱山におけるオンサイト試験を現地石炭鉱山で調達した石炭試料を用いて実施した。この試験には, バンドン工科大学で製作したオンサイト自然発火実験用サイロを現地まで搬送し,テクニカルスタッフと現地の学生の補助員によってデータ収集を実施することができたことから,概ね研究計画を完了させることができたと判断される。ただし,現地試験結果を十分に説明する数値シミュレーションはまだ完結しておらず,インドネシアでの試験において,自然環境とくに環境温度の制御が必要であることがわかり、改良が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の試験研究は,中国・遼寧工程技術大学の協力を得て自然発火実験用サイロを製作する。この製作に当たっては,インドネシアでのオンサイト試験の結果を考慮し,サイロの周辺温度を制御することとした。石炭試料は遼寧省阜新地域または内モンゴル地域の亜炭を搬入し,現地補助員により,測定を継続して実施する予定である。 平成27年度においては,平成25および26年度のデータに基づいて貯炭に関わる数値モデルを完成させ,貯炭層の自然発火数値シミュレーションを実施する。このとき,主要なパラメータ(浸透率,移流・拡散係数,水飽和率,発熱速度定数,多孔質層構造など)を考慮し,石炭層内の発熱,伝熱,CO, CO2などの生成ガスの移流・拡散量を推定し,海外でのオンサイト試験結果とのマッチングを実施する予定である。研究成果の応用に関しては,電力会社,石炭乾燥機メーカー,海上輸送会社などと共有し,研究を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
テクニカルスタッフの人件費の算定が休日や出張などによって変動したことと、インドネシアにおける物品費の見積りが為替変動によって過大になったことにより、繰越額が発生した。 平成26年度における当初計画に比較して増加すると予想される中国におけるオンサイト試験設備費ならびにテクニカルスタッフの人件費の増分を補うため使用する。
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